開業・創業時に「借金をするべきか悩んでいる方」へ
創業や開業の準備をしていると、多くの方が「なるべく借金はしたくない」「自己資金でなんとかやっていきたい」と考えます。私も商工会議所や個人相談の場で、そういったご相談をたくさん受けてきました。
ですが、結論から言えば創業時こそ、計画的に資金を借りておくべきです。今回はその理由を、実体験と相談現場での事例をもとに5つの視点から解説していきます。
理由① 創業前の方が「融資が通りやすい」から
まず、意外に思われるかもしれませんが、事業を始める前の段階のほうが融資が通りやすいというケースは多いです。創業後に売上がなかなか立たず、手元のキャッシュが減ってから融資を申し込むと、「返済原資が見込めない」と判断されて断られることも。
一方で、創業前の段階では「事業計画の説得力」と「熱意」が評価されやすく、夢を語ることが可能です。もちろん、創業融資には一定の審査がありますが、「赤字が出てからの借入」よりは圧倒的にハードルが低いと言えます。
理由② 手元に現金があると「経営の安心感」が違う
経営者にとって「現金(キャッシュ)」は命綱です。通帳に数百万円あるかないかで、精神的な余裕はまったく違います。私自身も会社経営をしていますが、創業当初に借りた数百万円のうち半分以上を現金で保持しています。
「100万円をゼロとして扱う」くらいの感覚で現金を持っておくと、月末の支払いや突発的な出費にも動じずに済みます。現金が尽きてからでは遅い。キャッシュがあることで経営判断にも冷静さが生まれるのです。
理由③ ビジネスチャンスに「即応」できる資金がある
事業をしていると、思わぬタイミングで「チャンス」が訪れます。たとえば、仕入れ価格が大幅に安くなるなど、有利な取引条件が提示されることがあります。こうしたチャンスに対応するには、すぐに使える資金が必要です。
私自身、ネットショップ運営の中で、お得な仕入れ話が舞い込み、融資で確保していた資金を活用してすぐに動けました。スピードが命の場面で資金がないと、せっかくの好機を逃してしまいます。
理由④ 信用情報を積むことで「次の融資が有利に」
将来的に事業拡大を考えているなら、小さな借入でも構わないので、早めに「借りて返す実績」を作っておくことが大切です。これが金融機関との信頼構築に直結します。
例えば、最初に200万〜300万円程度を借りて、きちんと返済することで、「この人はちゃんと計画的に経営できる」という印象を与えることができます。いきなり500万円、1,000万円を借りようとしても、実績がなければ審査は厳しくなります。
理由⑤ 補助金の申請にも「現金があること」が強い武器に
補助金制度を活用しようとすると、実は「前払い」で経費を支払う必要があります。補助金はあくまで「事後精算型」であり、最大2/3が戻ってくる仕組みですが、最初に自分で支払う必要があるのです。
この時、すでに手元に融資で資金を持っていれば安心ですし、補助金申請時の審査でも「自己資金あり」としてプラス評価になります。「今後借りる予定です」という説明より、「すでに借りて通帳にあります」の方が圧倒的に有利です。
補足:創業融資は意外と低金利。自治体の支援もチェック!
創業融資の金利は、平均で2%前後が一般的ですが、市区町村によっては「利子補給制度」があるところも。私が活動している大阪・豊中市では、200万円までの融資に対して1%分を補助してくれる制度があります。
実質金利が1%程度なら、年間の利息は2万円。これで心の余裕や信用構築、ビジネスチャンスの即応性が手に入るなら、非常にコスパの高い「保険」だと私は考えています。
まとめ:借入はリスクではなく「経営の武器」になる
借金というとネガティブなイメージがありますが、事業資金は浪費ではありません。仕入れや設備投資など、将来の利益につながる支出です。無理に大きく借りる必要はありませんが、自己資金と同額程度を借りておくことで、万一の撤退判断も柔軟に行えるようになります。
私自身も、過去に借入の返済に苦労したこともありますが、今思えばあの経験が今の経営の土台になっています。「怖いから借りない」ではなく、「賢く借りて、強い経営を作る」という視点を持っていただければと思います。
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