本日は「補助金」に関する正しい理解と注意点について解説します。
YouTubeなどでは「個人事業でも何百万!」「もらわな損!」といった補助金動画をよく見かけます。確かに補助金は経営を後押ししてくれる強力な制度ですが、誤解したまま使うと、かえってリスクになるケースも少なくありません。
私の立場から、「補助金はラッキーなお金」ではなく「戦略的に活用すべき制度」だということをお伝えしたく、このブログを書いています。
■ 補助金は“儲け話”ではない
まず強調したいのが、補助金は利益をもたらすものではなく、あくまで「事業目的を達成するための支援制度」だということです。そして、国としては政策目的を実現する手段ということです。
たとえば IT導入補助金は「中小企業のDX化促進」、持続化補助金は「販路開拓による経営持続」が目的です。補助金はその方向に進む事業者を後押しするための手段であり、「お金がもらえるからやる」という発想は本末転倒です。
■ よくある誤解:「ゾンビ企業が得している」?
ネット上では「補助金で生き延びるゾンビ企業がいる」といった批判もありますが、少なくとも一般の公募型補助金で継続的に“延命”することは不可能です。
むしろ、成長可能性が高い企業しか採択されないというのが現実です。
■ 補助金の落とし穴①|時間と資金の余裕が必要
補助金制度の大きな注意点の一つが、「自己資金と時間の余裕が求められる」ということです。
補助金は後払いで、補助率が1/2の場合なら、100万円使ってから50万円戻ってくるという仕組みです。
しかも、実際に補助金が振り込まれるのは半年〜1年後。
つまり、補助金を申請するには「先に全額支出しても問題ない」資金体力が必要なのです。
また、採択から事業開始まで数ヶ月かかることも多く、「いますぐやりたい事業」には不向きです。
■ 補助金の落とし穴②|制度上の義務とリスク
補助金には義務が伴います。たとえば多くの制度では、人件費アップや賃上げの要件が必須となっています。
- 最低賃金+30円の給与設定
- 年間3%以上の賃上げ目標
- 正社員登用の促進 など
従業員数が多くなるほど、この賃上げ要件が大きなコストになります。
そのため、小規模事業者やフリーランスには効果的でも、中規模以上では「割に合わない」という判断になることが多いのです。
■ 補助金の落とし穴③|事業計画書の壁
補助金申請では「事業計画書」の提出が必須です。
この計画書には、事業の目的や収益性だけでなく、国の政策と整合性があるかどうか、つまり:
- 市場の動向
- サプライチェーンへの貢献
- 雇用や生産性向上への波及効果
といった視点で評価されます。
「この事業は絶対儲かる」と主張しても、それが政策とズレていれば不採択になります。
これは補助金独特の価値判断であり、経験のない方にはややハードルが高いかもしれません。
■ 補助金は「合わせに行く」考え方で
最後に、補助金をどう活用するか?という問いには2つの考え方があります。
- 補助金に合わせて事業を考える(政策先導型)
- やりたい事業に補助金が合致すれば使う(事業主導型)
どちらも正解ですが、私は「やりたい事業をベースに補助金を活用する」ことをおすすめしています。
事業の自由度を確保しながら、投資の後押しとして補助金を使うことでリスクを抑える。
これが中小企業経営者にとって最も現実的で、納得感のある進め方だと考えています。
■ まとめ:補助金は「戦略的に使う道具」
補助金はうまく使えば、間違いなく強力な成長ツールになります。
しかしその裏には、資金・時間・義務・計画力というハードルがあります。
だからこそ、「今、自分がやろうとしている事業に合う補助金があるか?」という視点で探すことが大切です。
そして、自分で探すのが難しいときは、地域の商工会議所や中小企業診断士・行政書士などの専門家に相談するのが確実です。
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HATA行政書士・中小企業診断士事務所
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