経営管理ビザ厳格化で「事業計画の評価」が必須に|中小企業診断士の実務と注意点を整理

2025年10月から、経営管理ビザ(在留資格「経営・管理」)の許可基準が厳格化されました。
今回の改正で新たに加わったのが、事業計画について「経営に関する専門的な知識を有する者」による確認(評価)」が必要になった点です。

この改正を受けて、

  • 経営管理ビザの申請を行っている行政書士
  • 評価を依頼される中小企業診断士

の双方から、実務面での戸惑いや問い合わせが増えていると感じています。

本記事では、実際に 出入国在留管理庁 に電話で確認した内容を踏まえつつ、
中小企業診断士として関わる際の実務ポイントと注意点を整理します。
※あくまで筆者個人の確認・解釈であり、公式見解ではありません。


そもそも「事業計画の確認(評価)」とは何をするのか

今回の制度改正では、

  • 中小企業診断士
  • 公認会計士
  • 税理士

のいずれかによる確認が求められています。

確認したところ、
評価書のフォーマットや明確な評価基準は定められていません。

求められているのは、以下の3点です。

  • 計画に「具体性」があるか
  • 内容に「合理性」があるか
  • 実行面で「実現可能性」があるか

極端な話として、
「本事業計画について、上記観点から確認した結果、問題ないと判断しました」
といった1文のみの評価書でも申請自体は可能とのことでした。

ただし、評価書も含めて事業計画全体が審査対象となるため、
内容の薄い評価書であれば、結果的に不利になる可能性はあります。


中小企業診断士が事業計画を作成するのはNGなのか?

実務で最も注意が必要なのがこの点です。

出入国在留管理庁宛ての事業計画はNG

経営管理ビザの申請に用いることを前提に、
宛名が出入国在留管理庁となっている事業計画を作成する行為は、
官公署に提出する書類の作成に該当する可能性があり、
行政書士法との関係でリスクがあります。

民間向けの事業計画を「流用」する場合は?

一方で、

  • 金融機関向け
  • 投資家向け
  • 経営整理・戦略策定用

など、民間目的で作成した事業計画を、クライアントが結果的に申請に使用するケースについては問題ない、という整理でした。

事業計画は本来、さまざまな場面で作成されるものであり、
診断士が経営者の話を整理して計画に落とし込むこと自体は、通常の経営支援業務です。

このあたりはグレーな印象も残りますが、
**「誰宛てに、何の目的で作成したのか」**が重要な判断軸になります。


評価した結果に責任や罰則はあるのか

「評価した計画どおりに経営されなかった場合、責任を問われるのか?」
という点も気になるところです。

確認した限りでは、
評価者に対して直接的な罰則や法的責任が課される仕組みはありません。

ただし、

  • 数字が明らかに現実とかけ離れている
  • 事業実態と計画内容が著しく乖離している

といった場合には、
出入国在留管理庁から問い合わせが入る可能性はあるとのことでした。

「何でもOKを出せばよい」というものではなく、
通常の専門家業務と同様、一定の説明可能性は意識すべきでしょう。


自分で作った事業計画を自分で評価してよいのか?

この点について質問したところ、担当者の方も少し考え込まれていました。

結論としては、
評価基準(具体性・合理性・実現可能性)を満たしていれば問題ない
という整理でした。

例えば、

  • 別の目的(融資等)で作成した事業計画を、自ら評価する
  • 行政書士として作成した計画を、中小企業診断士として評価する

といったケースでも、制度上の明確な禁止はありません。


現実的な報酬水準はどの程度か

では、この業務は中小企業診断士の「独占業務」として成り立つのでしょうか。

結論から言えば、
これ単体で事業の柱にするのは難しいと感じています。

経営管理ビザの申請費用は、行政書士で30万円前後が相場です。
事業計画は申請書類の一部であるため、
そこから診断士に十分な報酬を支払うのは現実的ではありません。

実際に相談を受けた行政書士からは、
クライアントへの追加請求として5万円程度が限界ではないか
という話もありました。

5万円という水準で考えると、

  • ヒアリング:1時間程度
  • 作業時間:1日程度
  • 内容:財務面・市場面を中心とした妥当性コメント

といった範囲が現実的でしょう。


制度全体に対する個人的な所感

今回の改正は「厳格化」を目的としている一方で、
評価をクライアント負担にしている点には違和感があります。

本当に厳格な審査を行うのであれば、

  • 公的機関が報酬を負担し
  • 中小企業診断士等に業務委託する

といった仕組みの方が、制度趣旨に合致するのではないでしょうか。

また、行政書士法の趣旨は理解しつつも、
経営の専門知識を前提としない事業計画を、後から評価する構造には、
実務上のストレスを感じる場面もあります。

士業を取り巻く環境が変化する中で、
今後さらなる制度整理が求められると感じています。


まとめ

  • 経営管理ビザの改正により、事業計画の「専門家評価」が必須に
  • 中小企業診断士は評価業務として関与可能
  • 事業計画作成との線引きには注意が必要
  • 報酬水準は5万円前後が現実的
  • 単発業務というより、行政書士との連携が重要

本記事が、
同様の相談を受けている中小企業診断士・士業の方の参考になれば幸いです。

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