コワーキングスペースについて語るときに利用者同志のコラボレーションということが話題にあがるケースがあるのですが、個人的には幻想的に感じています。ですが、コワーキングスペースを単に仕事・勉強に集中できるデスクスペースとしてだけ活用するのではなく、”緩やかな”関係の仲間を作ることで有料自習室やSOHOオフィスではなくコワーキングスペースを利用するメリットを感じてもらえます。




単なる仕事場所、勉強場所ではなく情報交換、情報収集、出会いの場としてコワーキングスペースを活用することでコワーキングスペースを利用する意味がさらに出てくる

冒頭に書いたようにコワーキングスペースを利用している人同士でコラボレーションして新しいことをするというのは幻想的で難しく感じます。不可能と言っているわけではなく規模にもよります。例えば、セミナー開催などを一緒にしましょうというレベルであれば実現性は非常に高いです。ですが、一定以上の規模のプロジェクトとなるとお金や労力の分配の問題、プロジェクトマネージメントの問題などが発生します。コワーキングスペースの利用者同士のコラボレーションがうまくいくためには、ある意味第三者的にコワーキングスペースの運営者等がプロジェクトマネージャー的な役割を果たす必要があると感じています。

また、そもそも論として、すでに個々には仕事があり、コワーキングスペース運営者にも仕事があります。その点からそのプロジェクトに全員がコミットして動くためにはよほど魅力的なプロジェクトでないと難しいとも思っています。

私自身がコワーキングスペースを利用し始めた第一の理由は仕事ができる場所、第二に孤独感の払しょく

上記のように思う理由としては、私自身がコワーキングスペースを利用し始めた理由にも関係しています。ですので、まずはその点を軽く説明しておきます。

第一の理由は自宅ではON-OFFの切り替えができず、未来に対する仕事に取り組めなかったから

コワーキングスペースを利用し始めたのは、会社を退職して個人事業をし始めてから2年目ぐらいのときでした。会社の退職直後は副業で動かしていたネットショップを本業化できるように売上をあげることに取り組んでいました。ネットショップの場合、どうしても商品の撮影や発送等で自宅にいないと仕事にならないということもあり、売上アップに取り組んでいる間は自宅での仕事に支障をきたしませんでした。一定の売り上げを確保して、商品管理などを委託できるようになって大きく時間が取れるようになってから自宅での仕事の難しさを感じるようになりました。

見出しに書いたように、「未来」に対する仕事に取り組むのは自宅では非常に難しいと感じました。「現在」発生している仕事というのは、タスクや期限が明確になっているので自宅であってもきちんと仕事ができるのですが、「未来」に対する仕事はすぐにお金になるわけでもなければ、誰かの依頼を受けているわけではないので自宅でスイッチを入れるのが非常に難しいです。「未来」の仕事とは、新規事業、新規ビジネスアイデアの検討など、すぐにお金になるわけではないけども、検討が大切な仕事のことです。

第二の理由は、自宅での仕事に孤独感を感じていた(情報収集に対する不安)

自宅というのは、誰かに会ったり、会話をしたりということがありません。ですので、非常に孤独感を感じます。孤独感というと人恋しいというイメージがあります。事実、そういった側面はあるのですが、単純に人恋しいというわけではなく、他人と接点がないことによって取り残されている感を感じるということの方が大きいです。

特に私はIT関係の仕事ですから、最新情報のキャッチアップというのが大切になってきます。会社などであれば、社内の人間との会話の中で、流行りの手法、アプリなどの情報が入ってきますが、自宅であればそういうわけにはいきません。Facebook等のSNSでのキャッチアップも可能なんでしょうが、前職では会社全体でSNSがあまり盛んではなかったこともあって、仕事に関する情報というのはほとんどタイムラインには流れなかったということもあります。ちなみに、現在は知り合いも増え、SNSの方がたくさんの情報をキャッチアップできているとも思っています。

コワーキングスペース内の交流は濃すぎず、他人でもない程よい距離感が理想に感じる。会社における他部署の同僚のようなイメージ

コワーキングスペースにおけるコミュニティ、交流にはさまざまな考え方があります。特にその濃度については人によって考え方が異なります。私自身はサラリーマン時代からランチは一人が良いし、会社の飲み会とか大嫌い派だったのでそもそも他人に濃い交流は求めていません。以前に日経新聞の取材を受けたときにも同じように感じで答えたのですが、会社における他部署の同僚のようなイメージの関係が理想と思っています。

感覚的なことになるのでニュアンスがきちんと伝わるかわかりませんが、会社において同部署の上司、メンバー、部下とは接点も多く、非常に濃い関係になります。これはデスクなどの配置が近いということだけでなく、同じプロジェクトなどに取り組み、同じ悩みや喜びを共有しているということもあります。コワーキングスペースの他の利用者とこのような濃い関係を築くことは難しいですし、自分も相手も望んでいないケースが多いと思います。

一方で同じフロアの中で仕事や勉強をしているのに、他社の知らない人のような関係というのは残念に思います。会社の他部署の同僚のイメージというのは、普段は接点がないけども、すれ違えば挨拶するし、ランチ時や帰宅時にエレベーター等で一緒になれば、一緒にランチに行ったり、駅まで話をしながら帰るというような関係です。コワーキングスペースでいえば、一緒に仕事をすることは無いけども、挨拶をしたり、カフェスペースで雑談したりするような関係です。

ちなみに日経新聞の私のインタビュー記事は下記を参照ください。

共用オフィス、使いこなす(Bizワザ) 空港内・保育OK…多彩に - 日本経済新聞

仕事や打ち合わせで手軽に使えるコワーキングスペース(共用オフィス)が急増している。無線LANのWi-Fi(ワイファイ)など機能を充実させ、空港に設置したり保育施設を併…

コワーキングスペース内に知り合い、仲間ができることでコワーキングスペースの活用メリットが大きくなる

コワーキングスペースにはさまざまな業種、職種の人がいます。そこで知り合いや仲間ができることは仕事だけでなく個人の視野も広げることにつながります。時には仕事を手伝ってもらうこともできます。クライアントからの依頼に応えるための自分のネットワークが大きく広がることになります。

また、仕事に集中するという意味でも赤の他人ではなく知り合いに見られているかもということがちょっとしたアクセントになり集中力を高めることもあります。勉強をしている人も周囲の意見やアドバイスをもらうことができます。例えば、私が運営しているコワーキングスペースUmidassには大学受験の自習室として利用している高校生がいますが、進学先の大学について他の利用者や私などに相談することもあります。学校の先鋭や親ではない大人に相談できるというのはコワーキングスペースならではだと感じます。

コワーキングスペースを仕事、勉強に集中する場としてだけの活用にするのではなく、人との接点を作る場として活用することでコワーキングスペースの利用効果が高くなります。

コワーキングスペースで知り合いや仲間を増やすための5つ方法

では、コワーキングスペースで知り合いや仲間を増やすにはどうしたらよいのかということをまとめました。




挨拶をする

シンプルですが、もっとも大事なことがあいさつです。利用頻度によっては毎日のように顔を合わせる人同士なのにあいさつもしないというのは不自然ですし、お互いの壁を感じてしまいます。積極的に交流を持ちたいとは思っていない人もあいさつだけはしてもらいたいです。有料自習室のように完全ブース席であれば、あいさつもなく目的のデスクに向かって、自分の仕事、勉強が終われば退室するという形で構わないと思いますが、多くのコワーキングスペースではオープンデスクなど共用空間となります。ちょっとした荷物の置き場の問題や音、匂いなど他人であれば気になることもあいさつ一つで許容できる関係になることも少なくありません。

コワーキングスペースの運営者、運営スタッフに自分のことを知ってもらう

多くのコワーキングスペースでは、利用者同士をゆるやかに結びつけるお手伝いをしています。例えば、ある人が仕事で困っていた場合に、それを解決できる利用者がいれば紹介してあげたり、趣味が同じ人同士を紹介してあげたりという形です。

自分から積極的に交流したり、声をかけたりするのは苦手でもコワーキングスペースの運営者、運営スタッフを経由することであれば大丈夫という人も多くいます。

コワーキングスペースの運営者、運営スタッフは、利用者の方に空気を読んで声掛けなどしているスペースも多いので、自分のことをできるだけ知ってもらうようにすることで他の利用者との接点を作ってもらえます。

勉強会やイベント、ランチ会、飲み会などに参加する

コワーキングスペースの運営方針によりますが、勉強会、イベント、ランチ会、飲み会などを開催しているスペースも多くあります。興味のある内容の場合や時間が空いたタイミングで参加してみると良いでしょう。

これまで音や匂いなどの所作が気になっていた人も一度会話をしてみることで受け入れるようになることもあります。

思い切って、相談してみる。尋ねてみる

これは少々ハードルが高い行為かもしれません。コワーキングスペースに頻繁に出入りすると誰がどんなことをしているのかということが少しずつわかってきます。

もし、自分の抱えている問題や課題が解決できそうな人がいれば思い切って相談してみたり、尋ねてみてください。相手の仕事の状況によります(そのあたりは雰囲気で空気を読んでくださいw)が、多くの場合には無碍に扱われずに話を聞いてくれるはずです。

自分で勉強会やセミナーを開催する

ここまで、紹介した方法はどちらかと言えば受け手的な方法ですが、最後は自分で勉強会やセミナーを開催するという方法です。

コワーキングスペースで勉強会やセミナーを開催したいと運営スタッフに相談してみてください。ほとんどの場合、協力的に動いてくれます。参加者から主催者にポジションが変わることでつながる人の数も大きく変わってきます。

コワーキングスペースで勉強会やセミナーを開催すると、貸会議室で独自で開催する場合に比べると他の利用者が参加してくれたり、コワーキングスペースが広報してくれたりします。勉強会、セミナーの収益をあげることもできれば、自分の仕事につなげることもできます。

ぜひ、TRYしてみてください。