心斎橋のコワーキングスペース「Join」

コワーキングジャパンというコワーキングスペースのポータルサイトを運営していると増加数の多さにも驚かされますが、閉店するコワーキングスペースの多さにも驚くとともに残念な気持ちになります。私自身が店舗運営というものには経験がなかったので、閉店するコワーキングスペースの多さには驚きましたが、調べてみると飲食店などに比べるとはるかに廃業率は低です。そのあたりは下記の記事に書いています。

コワーキングスペースは儲からないと言われるが飲食店よりはるかに廃業率は低い

前回の記事である「コワーキングジャパンを3年間運営して感じるコワーキングスペースの現状」に書いたように新規コワーキングスペースは増加していますが、潰れているスペ…

廃業率の数字から見ると、コワーキングスペースが儲からないビジネスモデルというわけではなく、単に経営者の能力の問題であるようにも思います。ただ、コワーキングスペース運営者は私と同じように店舗経営、運営の経験ない人も多いので、知識不足・経験不足からくる失敗もあると思います。そこで、コワーキングスペース運営に失敗しないためのポイントをピックアップしてみました。




コワーキングスペース運営に失敗しないために抑えておきたいポイント

コワーキングスペースと言っても他の事業と同じく売上ー経費がプラスになれば金銭的な面からは継続が可能です。利益が出ていても別の理由で廃業されるケースはありますが、ここではお金の話を中心にまとめています。

【売上】継続的かつ安定的な売上を見込める料金体系を作る - 月額課金と課金システム

コワーキングスペースの料金として、大きく2つの料金体系があります。ドロップインと言われる一時利用料金と月額料金です。月額料金とは毎月定額を払えば条件内で使いたい放題使える料金となります。ドロップインはその場限りの利用ですので、カフェなどをイメージしていただくとよいと思います。一方で月額料金はスポーツジムのようなものをイメージしていただくとわかりやすいと思います。

コワーキングスペースの売上において重要なは月額料金です。月額料金は安定した売上が見込めます。途中で退会される方もおられますが、基本的には右肩上がりで固定売上があがっていきます。これまでコワーキングジャパンを運営してきて、ドロップイン利用のみのスペースというのはどれだけ賑わっていても閉店しているように思います。

ここで注意してもらいたいのは、課金システムです。現金払いですと自然消滅的に来なくなる会員が出てきます。契約時に利用期間等の縛りを設けていても、来ない人からお金を徴収するのは非常に難しいです。ですので、クレジットカードか自動引き落とし(口座振替)による自動課金システムをきちんと導入することが大切です。

経営的な側面だけで見ると、お金を払っているのに利用しない幽霊会員が増えることが売上の拡大につながります。スポーツジムなどは頻繁に利用している利用者だけでは赤字で幽霊会員、準幽霊会員の料金が利益につながると聞いたことがありますが、コワーキングスペースも似た側面はあります。

月額料金の利用者を増やすサービス/単価を上げるサービス

月額料金の利用者を増やすための施策の一つとして、利用時間帯別の料金体系を導入するということがあります。全営業時間を使うフリーランス等の人と会社帰りに使うサラリーマンのように会社帰りだけや土日だけを利用する人の料金プランを用意することで受け口を広くできます。また、レンタルスペース等の利用料金が安くなる等、会員メリットを作るということも一つの方法です。

次に単価を上げる方法としては、会員専用席となる固定席、事業の住所として利用できる住所利用・登記利用、私物を置いて帰れるロッカーなどがあります。特に住所利用や登記利用は簡単に解約されなくなるというメリットもあります。

【集客】利用してもらう、知ってもらうきっかけとなる仕組みを作る

コワーキングスペースとなるハード的な箱を作って、宣伝のためのホームページを作ってもなかなか利用者は来ません。コワーキングスペースを利用してもらったり、知ってもらうきっかけが必要です。都心部では、すでに多くのコワーキングスペースがありますので、コワーキングスペースの認知が広がっていますが、それだけ多くのコワーキングスペースがありますので、SEOでホームページの順位を上げることは並大抵のことではできません。また、郊外や地方ではそもそもコワーキングスペースというサービスが認知されていない可能性があります。

イベントや勉強会、セミナーを開催する/開催場所として提供する

イベントや勉強会、セミナーを開催するとその参加者にコワーキングスペースの存在を知ってもらうことができます。参加者にドロップイン利用等のクーポンを渡すことでコワーキングスペースの説明をできる機会を作るというのも一つの方法です。

レンタルスペース、貸し会議室を提供する

レンタルスペースや貸し会議室もイベントや勉強会、セミナーと同様にコワーキングスペースを知ってもらうきっかけになります。こちらもクーポン等の配布は有効です。

また、レンタルスペースの紹介サービスは増えています。そのようなサービスに登録することで自分ではPRできなかったユーザーに告知をしてもらうことができます。

ドロップイン利用を提供する

ドロップイン利用の料金体系を提供していないコワーキングスペースも多いですが、利用したことのないコワーキングスペースを月額利用してもらうには少々ハードルがあります。ドロップイン利用があれば、短時間の利用をしてもらえるので利用に対するハードルを下げることができます。

【固定費】家賃や人件費などの固定費を下げる

コワーキングスペースは飲食店などに比べると経費の少ない事業です。その中でも大きな固定経費が家賃と人件費です。

家賃は立地と広さに連動をします。立地が良ければ、それだけ利用者は多くなりますが家賃は高くなりますので、場所は簡単に変えれることではないのでこの判断は経営者として非常に大事です。場所が良ければ良いというわけではなく、家賃が高い都心部ほど閉店しているケースが多いように思いますので、バランスが大切です。

他の競合スペースが多い地域では人は集まりやすいですが、他のコワーキングスペースとの差別化などが重要になってきます。郊外や地方ではコワーキングスペースという存在自体が差別化となり、近隣に他のスペースがなければ遠方からも利用者が来てくれることになります。

また、家賃を大家と交渉して売上連動型にしているコワーキングスペースもあります。古くなった借り手がいないビルなどで交渉してみるのも一つの手です。

次に人件費です。利用者の接客だけでスタッフの手がいっぱいになるほどの広さのスペースであれば良いのですが、そこまでの大きなのスペースでない場合には、スタッフの手があいてしまいます。このスタッフの手空き時間をどのようにお金に換えるかということも大切なポイントです。

小さなスペースでは利用者の方に協力をしてもらったり、時給ではなく請負契約として受付業務だけを依頼しているケースもあるようです。

【資金】黒字化までの運転資金を確保する

コワーキングスペースは飲食店のようにオープンキャンペーンなどで集客をすることは難しいです。存在を知ってもらい利用者が増えるまでは時間がかかります。最近では、コワーキングスペース自体の認知が広まっていますので、幾分マシになっているかと思いますが、黒字化まで1年ほど必要だったというスペースの話をよく聞きます。

地方や郊外であればもう少し時間が必要となるかもしれません。その期間の運転資金を計算しておく必要があります。

【初期投資】初期投資を抑える

前述したように、コワーキングスペースは黒字化まで時間がかかります。初期投資をできる限り抑え運転資金を確保することも重要です。

居抜きで利用できる店舗やオフィスを利用したり、中古設備を購入するなどの工夫で運転資金を大きく抑えることができます。




コワーキングスペース運営にはソフト面も非常に重要

ここまでお金の話を中心に書いてきました。有料自習室のように無人運営のサービスであれば、ここまでの話が重要ですが、コワーキングスペースではソフト面も重要となります。

運営スタッフがどのようなスペース作りをしていくのかという点が非常に重要です。その方向性については正解はないと思っています。ですが、1点重要な点があるとすれば運営スタッフの資質です。売上があがらない事業だからと言って新卒社員などを配置すると悪循環に陥る可能性があります。

それなりの会社であればトッププレイヤーを配置することが重要です。その人と話をすることを目的にスペースを訪れる人もいますし、利用者同士を結び付けるという意味でもスタッフには知見が必要となってきます。

もっと体系的に理解したいという方は、こちらの書籍がおすすめです。

この記事が少しでもスペース運営の参考になればと思います。