創業・開業にあたって自己資金がいくら必要なのかという相談をよく受けます。自己資金という意味では、融資を受けるのにいくら必要なのか?という話と実際に事業をするうえでいくらあった方が良いのかという点があります。その点について解説します。

新規開業資金は、自己資金要件はありませんが、融資を見据えた場合に必要な資金とは、

これまで、創業の方は、日本政策金融公庫の新創業融資制度を活用される方が多かったですが、こちらが2024年3月に廃止されましたので、今後は新規開業資金を活用する方が多くなります。新創業融資制度と新規開業資金の違いはこちらを参照ください。

従来の新創業融資制度は、自己資金要件が1/10となっていましたが、新規開業資金は自己資金要件はありません。

自己資金要件がないということと自己資金が必要がないということは違う

自己資金要件がなくなったから、融資を受けやすくなったと言われる方も多いですが、自己資金要件がないということと自己資金が必要ないということは違います。

自己資金要件がないということは、自己資金がなくても審査をしてくれるということであって、融資を実行してくれるということとは異なります。

実際、新創業融資制度は自己資金要件は1/10でしたが、実際のところは、1/3のほどの自己資金がある方の方が融資実行の可能性は高い傾向にありました。自己資金が少なくても融資が実行される方というのは、これまで経験のある業種で創業される方など創業後の事業実現の可能性が高い方でした。

自己資金は1/3は用意しておきたい。そもそも自己資金とは?

前述のとおり、自己資金は1/3は用意しておきたいところです。具体的な金額は事業内容によりますが、個人事業であれば、100万円以上、法人を設立するのであれば300万円以上を用意していただくと融資実行の可能性は高まります。

借りたお金は自己資金とは言えない

では、そもそも自己資金とは何かというと、「創業・開業にあたってその準備としてコツコツと貯めてきたもの」と言えます。ですので、「他の金融機関からの借入」や「親族・知人からの借入」は自己資金とは言えません。

法人の場合、資本金は1万円からでも良いが。。

法人の場合、基本体には資本金が自己資金となります。法人設立自体は1万円からも可能ですが、現実的なところを考えると最低でも100万円、できれば300万円というのがのぞましいです。300万円というのは、2006年の会社法施行まで認められていた法人形態です。当時は、株式会社設立は1,000万円必要であり、法人設立の最低要件が300万円でした。その名残りで300万円というのが一つの目安と言われています。余談ですが、法人口座設立にあたっても資本金が最低でも50万円くらいはないと厳しいという印象です。

見せ金は違法、根拠のない多額のお金は自己資金と見てもらえない

それでもどこかからお金を通帳に入れてしまえば大丈夫ではないかと思う人も多いと思いますが、「見せ金」は虚偽の申告をして融資の申告をすることとなるので違法となります。また、融資の審査においては自己資金を貯めるプロセスについても通帳の記帳内容から確認されます。「退職金」や「相続したお金」など出所がはっきりしているお金でなければ、突然、通帳に入ったお金は創業・開業準備として貯めてきたお金とは見てくれない可能性が高いです。

ご自身で貯めていてもタンス預金は認めらない

せっかくご自身で貯めたのに自己資金と見てもらえない可能性が高いお金がタンス預金です。タンス預金は違法でもなんでもないのですが、通帳に記録が残っていないため、お金の出所が証明できません。そのため、どこかから借りたお金や見せ金とみなされる可能性が高いです。

現金がなくても現物を自己資金とできる可能性はある

事業に使う「土地」「建物」「自動車」「パソコン」「そのほか設備類」であれば、現金でなくても自己資金として加えることができます。自己資金は、申し込み時点で現金で保有している必要はありません。すでに使ったものも自己資金とすることができます。具体的には、創業計画書では、すでに保有している設備類は左側に記入し、その設備に相当する金額を自己資金の金額に足せばよいです。

自己資金には生活に必要なお金は含まれない

創業・開業の融資にあたっての自己資金とは、事業に使うことのできるお金です。前項の表の左側に記入した設備資金・運転資金を上限として融資の申し込みをすることができます。表を見ていただくとわかるとおり、事業には関係のない生活費などは含まれていません。

そのため、事業の自己資金とは別に生活のための資金が必要となります。一般的に言われるのは3か月分~半年分の生活費です。何か月分が必要となるのかは、事業内容や事業状況によって異なってきます。すでに仕事受注できていて、入金のめどがあるのであれば少なくても良いと思いますが、顧客開拓から始める必要がある場合には、入金までのサイクルを考えると半年分ほどあった方が良いと思います。

融資にあたっては、その説明および現金の存在がわかる資料を用意する方が好ましいと思います。

創業・開業にあたって必要な金額についてまとめると

上記の内容をまとめると、事業に必要となる資金の1/3 + 3ヶ月~半年分の生活費となります。

また、合わせて自己資金の出所(貯め方)も重要となりますので、その点も含めて準備を進めていただく方が良いと思います。

融資の可否については最終的には事業計画が重要ということを忘れずに

本記事では自己資金についてまとめてきましたが、融資を受ける場合には自己資金は一つの要素でしかありません。最終的には事業計画が重要です。創業・開業時の事業計画では下記の点が重視されます。自己資金は、創業・開業の資金の準備状況という側面について重要な要素であって、自己資金のみで決まるわけではありませんので、ご注意ください。

  • あらたに事業をする理由(創業理由や経歴)
  • 創業・開業にあたっての準備事業(資金・スキル、経験)
  • 創業・開業後の収支計画

創業計画書は、ご自身で考えるものですが、事業計画を構想するということと、資料としての言語化、金融機関に向けたプレゼン資料の作成は異なります。ご自身での作成は難しいと感じられる方はお気軽に当事務所に相談ください。

資料全体を作るだけでなく、ご自身での作成も可能であると判断すれば、助言だけを行う形でのご提案も可能です。

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