最近、周囲で出産・育児休暇が終了後の仕事復帰ができるかどうかという悩みを耳にします。一方で、私が運営しているコワーキングスペースでテレワークをする人が増えています。そんな状況を目にする中でコワーキングスペースでのテレワークが広まれば会社にも従業員にもプラスが大きい気がすると感じることが多いです。
テレワークは在宅勤務だと考えるから難点が多いのではないか?コワーキングスペースを使えば解決することもないかなと。(もちろん新しい問題も出てくるのですが。。)
出産や育児あるいは介護等で仕事の継続が難しくなることはいつ誰に訪れるかわかりません。もし、そのようなシチュエーションになった場合になぜ仕事の継続が難しいのかと言えば、多くの人が口にすることとしては以下のようなことなどがあります。
- 保育施設や介護施設への送り迎えをしたあとに通勤すると出勤時間に間に合わない、もしくは終業時間後に迎えに行くとお迎えの時間に間に合わない
- 病気やケガの際に付き添いをしないといけない
- 緊急時にすぐに駆けつけることができない
育児、介護ともに個々の状況によるので一概には言えませんが、1日の中で8時間(もしくは6時間とか)の仕事時間を取ることが不可能という人は少ないのではないかと思っています。ただ、実際には、通勤時間があるので労働時間+1~4時間ぐらいかかってしまうという問題であったり、連続して拘束されることは難しいというような問題があってフルタイムの勤務というのをあきらめるというケースが多いように思います。
もし、下記のような条件であれば、仕事を継続できる人が多いのではないでしょうか。
- 通勤時間がほとんど掛からない労働時間≒拘束時間の環境
- 労働途中に仕事を中断して戻ってから再開できる仕事環境
- 緊急時にすぐに駆け付けることのできる場所での仕事
- さらに加えるなら状況に応じて労働時間を増減できる(もちろん給料は労働時間に連動する)
少し問題が違うと言われるかもしれませんが、私自身にとってお寺の仕事が同じような条件を持っています。私自身は副住職で父親が住職である状況なので、毎日、フルタイムでの仕事はありません。午前中だけ仕事のある日が月のうちの半分くらい+急にお葬式等の仕事が入るというような状況です。数年前はこの状況でフルタイムでベンチャー企業のマネージャー職をしていました。結果的にいろいろな理由で体調を崩し退職しました。
それで、今は独立しているのですが、上記の条件を完全にではないですが、満たすような環境を作っています。朝から自分の仕事を2時間して、お寺の仕事を2時間して、戻ってから夜まで仕事するというような感じの状況です。出勤して仕事をするスタイルの場合には何が難しいかと言えば、一番は仕事を中断することです。中断をして別の用事を済まして戻ってくることができる環境を作るのは難しいです。それが、テレワークであれば、結構、解決してしまうのにと思うわけです。
そもそもテレワークの導入が難しいという理由は何か?テレワーク=在宅勤務に拘る必要はないのでは
日本ではテレワークは難しいとよく言われます。(こういう場合の日本では・・・というフレーズはどこまでどうなんだろうかという疑問は常に付きまとうのですが。。)
少し調べてみるとテレワークが難しい理由としてはさまざまなものがありますが、共通してでてくるのは、
- そもそもテレワークできる仕事がない/テレワークでは仕事ができない
- 仕事の管理ができない/ちゃんと仕事をしているのかわからない
- 家で仕事するなんて不公平だ
というようなことがあります。もちろん職場でないと仕事ができないテレワークが不可能なケースというのももちろんあります。セキュリティ上オフィスの外では仕事ができない場合や設備がないとできない仕事などです。このあたりのことは今回の論点から外しています。ただ、自社の仕事はオフィス外ではできないと思い込んでいるのであれば、一度、再考はしてみてはいかがかと思います。
テレワークが難しいとして挙げられる理由のほとんどは思い込みであったり、仕組みを考えることで実現できることが多いです。
そもそもテレワークの方が大変で、仕事はきちんとする(むしろオーバーワークするケースも・・)ということがわからない人が多い
上記のテレワークが難しい理由の後半よりのことからなのですが、自宅で仕事をするなんて楽だし、いつでもサボれるじゃないかという前提での考えです。
ですが、多くのテレワークをする人は逆だと思います。見られていないからこそアウトプットをしないといけないと考えているし、サボっていると思われるように仕事をしていると思います。極端な話ですが、オフィスに出勤する場合には、出勤していること自体で仕事をしているとみなされるケースが多いです。
あまり日本人には云々というのは好きではないですが、むしろ勤勉な日本人向きではないかとさえ思います。
今やホワイトカラーの仕事のほとんどはパソコンに向かっているのにテレワークできる仕事がないというのはありえない
テレワークができる仕事がないというのはテレワークを否定するためだけの理由ではないかと思います。昔のように紙の書類が飛び交うのであればともかく、今やオフィスでは1人1台のパソコンが当たり前で1日の仕事時間の大半はパソコンの前にいます。ペーパーレス化も進んでいます。パソコンの前にいる時間は少なくともテレワークできます。
確かにすべての勤務時間をテレワークは難しいかもしれませんが、少なくとも週に3日はテレワークできると思います。コミュニケーションが取れないと仕事ができないというのも割とツール類で解決できます。特に多くの人がテレワークでできないと思っている仕事を依頼するコミュニケーションについてはチャット類のツールで解決します。むしろ簡潔に物事を伝えるので効率的になります。コミュニケーション的なことで言えば、雑談的なことはしにくくなるのでブレスト的なことや雑談きっかけのイノベーションなどは起きにくなるかもしれません。
余談ですが、私が一緒に仕事をしているメンバーの中には1年くらい会ってない人もいます。直接会わないことによるロスが起きることもありますが、そのようなロスが起きることは稀なのでトータルで考えたら完全にプラスです。
テレワークは育児や介護に限らずに導入することで会社にも従業員にもプラスになる
テレワークは不公平・不平等だから導入不可能と言う人はテレワークが育児や介護のある人のための特別な制度と思っているからだと思います。テレワークを育児や介護の人に向けて特別に用意する制度にするからそのような話が出てくるわけで、育児や介護に限らずにテレワークを導入すれば良いのだと思います。
それでも毎日出勤しないといけない仕事の人もいると思います。テレワークが全従業員で機能するようになればもしかしたら出勤手当のようなものができて出勤している人は手当が多くてずるい的なことになるかもしれません。
テレワークって育児や介護の人が働けるようにする制度的に伝わっているケースが多いですが、そもそもテレワークだと会社にも従業員にもプラスになります。
通勤時間などの移動時間が短くなるので生産性が向上する
通勤時間がなくなれば、それだけ有効活用できる時間が増えます。個人がその時間をどのように活用するかは別にして、個人の時間が増えることはプラスに働くはずです。また、通勤時間を含めて拘束時間と考えた場合には実質時給はあがります。
子育てや介護の人も働ける=会社は多くの人材を確保できる
災害や交通機関の支障で無理に通勤する必要がなくなる
通勤交通費、オフィス代が安くつく/個人の手取りは増える
通勤交通費が少なくなれば、会社として支出が少なくなるだけでなく、通勤交通費は社会保険の算定に含まれるため通勤交通費が少ない方が手取りは増える。また、オフィスに全社員分のデスクが不要になれば、それだけでオフィス賃料などの支出が少なくなる。(この話は私の勘違いかなと思うくらい意外とどこにも出てこないですのですが。。)あと、従業員にとっては通勤しないということは結構いろいろな出費を減らせます。服装などにかかる費用などであったり、会社が負担してくれない駐輪場とかがその代表的なものです。
マイナス面というかテレワーク導入の一番の問題はおそらく上司(評価者)と評価の仕組み
では、プラスばかりかと言えば、そうではありません。テレワークが不公平という認識はなくなったとしても評価の不公平という形で残る可能性はあります。
そもそもオフィスにいてもまともに評価できない上司が多いので、テレワーク普及のネックは評価の仕組みだと思います。逆に言えば、評価の仕組みを変えることによって、仕事の管理ができないとか、何をやっているのかわからないということは解消されるはずです。
今は、テレワークを育児や介護のための制度としていて、評価制度は既存のままという状況がテレワークの推進を遅らせているような気もします。
もちろん他にも問題はあります。
- チームプレーをしないといけない場面では非効率になる可能性がある
- 結果が重視されるようになるのてオーバーワークになりがち
- 仕事とプライベートのON/OFFの切替えが難しくなる
- 指導がしにくくなる。特にOJTは機能しにくくなる
などなどです。テレワークだからずっと出社してはいけないというルールにする必要はなく、状況に合わせた使い分けかなと思います。育児や介護というのは従業員側の理由ですが、逆に会社から見てもプロジェクトによっては出社メインとかテレワークメインとか切り分けたらいいのだと思います。
また、この記事では具体的には触れませんが、さまざまなツール類の活用によって、防げるマイナス要因も多くあります。ベストなツールというものが存在するというよりは、自社の業務に最適なツールの導入やソフトウェア的なカスタマイズや運用ルールの策定が必要なのだと思います。いきなり全社的に導入というよりは、そのあたりに詳しいチームや人を使って、実験的に導入していく方がスムーズだと思います。
結構、コワーキングスペースでのテレワークってオフィスへの出勤と在宅勤務のハイブリッド的になっていて良いと感じる
コワーキングスペースでのテレワークを薦めるって、私がコワーキングスペースやコワーキングスペースのポータルサイトを運営しているからですよねって言われそうなのですが、むしろコワーキングスペースでテレワークをしている方を見てコワーキングスペースでのテレワークがオフィスへの出勤と在宅勤務のハイブリッド的な感じで良い感じに見えます。加えて、この投稿を書いてるのは、テレワークを検討する会社が1社でも増えて退職をせざるを得ない人が減ればと思うからです。また、人を雇用する側にたって初めて通勤交通費の負担の大きさも感じます。その点からも導入の検討をすることは会社にとってマイナスでないと思います。
コワーキングスペースが全国で1,000を超えようとしており、30分以内圏にコワーキングスペースがある人が増えている
まず、大前提としてコワーキングスペースが急速に増えているということがあります。3年前の夏(2015年8月)に日本全国で300件なかったコワーキングスペースが今や1,000を超える勢いです。地方や郊外にも増えていて、自宅から30分圏内にコワーキングスペースがある人が増えています。
少なくとも最寄り駅の路線にはコワーキングスペースがあるケースが多いので、乗り換えなく行ける人も増えていると思います。
▼コワーキングスペースを探すなら「コワーキングジャパン」を使ってください
近くのコワーキングスペースを利用することで会社は交通費やオフィス代が抑えられ、従業員はON-OFFの切り替えもできる
自宅から見てオフィスより近いコワーキングスペースで働くことで交通費やオフィスに関する費用が抑えることができます。多くのコワーキングスペースは月額10,000円前後ですので、オフィスに関する費用まで考えると会社にとってマイナスになることはないと思います。
また、従業員にとっても自宅と職場を分けることができON-OFFの切り替えもできます。そのほかにも、自宅とは異なり人を呼んで打合せなどができたり、別の会社の人や事業者と接点ができることで新たな視点を得れる可能性があると言ったことができます。また、仕事をしているかわからないという不安点も完全ではないですが、仕事をする空間なので寝たり、遊んだりしているという心配は無くなります。
私自身も自宅で仕事をしろと言われるとちょっとできる自信がないので、そういう意味ではコワーキングスペースという施設が増えてきた今こそがテレワークの導入タイミングなのではないかとも思います。