コワーキングスペースが日本全国で増えています。うちで「コワーキング ジャパン」というコワーキングスペースの紹介サイトを運営している関係で、運営について相談を受けることがあります。

多くの相談は、売上が上がらないとか、集客できないということなのですが、コワーキングスペース単体では事業的に難しい場合が多いのかなと感じます。一方で、コワーキングスペース×「他事業」でうまくバランスが取れているところもあります。そんな事例の紹介や可能性の紹介です。

コワーキングスペースと他事業のコラボレーション事例の紹介

私が運営している「コワーキングスペースUmidass」は、私の実家であるお寺「安楽寺」の中にあるのですが、今年にUmidassの利用者の方と安楽寺を結びつけたということがありました。

また、コワーキングスペースのポータルサイト「コワーキング ジャパン」にもコワーキングスペース単独ではなく、他事業との関連性を持ったスペースが増えています。

コワーキングスペースのポータルサイトを運営していると新しくできるスペースの多さに驚くとともに、閉店の多さも目につきます。閉店にはさまざまな理由があると思いますが、コワーキングスペース単体では事業運営上、難しいということなのだと思います。

そこで、コワーキングスペースを運営している人、これから運営したいと思う人にとって少しでもヒントになればと思いこのテーマにしました。

※文中で紹介しているコワーキングスペースは実際には行ったことのないスペースも含まれています。運営者の方のイメージされている運営方向とは違うかもしれません。その点はご了承ください。




 コワーキングスペースUmidassの場合には、お寺の中にあるコワーキングスペース

まず、最初に紹介するのは手前味噌ですが、自社の事例としてお寺の中にあるUmidassです。(厳密には、お寺の敷地内にはないのですが)

私個人の気持ちの問題なのですが、Umidassはあまりお寺にあるということは前面には出していません。(人にはもっとPRした方が良いと言われるのですが。。)

Umidassの場合には、お寺の中にあるということがUmidassにとっても、お寺にとってもプラスになっている側面があります。

Umidassにとっては、安心感のある空間、静かな空間として認識されています。特に言われるのが、この時期になると増える受験勉強をしている女子高校生です。有料自習室などではスタッフがいないところも多く、知らない他人と2人きりになる瞬間もあるらしく落ち着いて勉強に集中できない場合があるそうです。その点、お寺にあるということ+スタッフがいる+オープンな空間ということで安心感があると言われます。

お寺にとっては、お寺に相談するのは重たいけど、いつもUmidassで会ってる私に相談するのであれば気楽に相談できるということで仏事に関して相談を受けることがあります。今年は利用者の方の血縁の方の葬儀もさせていただきました。Umidassで布教活動をする気は一切ありませんし、Umidassには宗教色も無く、私が副住職ということを知らない人も多いのですが、お寺離れが進んでいる中でお寺に親近感を持ってもらえる方法になっていると感じます。

カフェやBar、居酒屋など飲食店とコワーキングスペース

カフェやBar、居酒屋など飲食店とコワーキングスペースという組み合わせは以前から比較的多いです。

コワーキングスペースと飲食店どちらが主なのかはそのスペースの成り立ちによると思いますが、コワーキングスペースにとっては飲食利用により単価があがることになり、飲食店にとってはランチタイムやディナータイム以外の時間を収益につなげることができます。

今年はたまたま神戸にあるカフェのあるコワーキングスペース2件を取材させてもらいました。

カフェとは関係ありませんが、どちらのスペースも起業支援をしており、コワーキングスペースで一緒に仕事をすることで事業プランだけでなく、人柄や考え方も見極めることができるという話をされていたのも印象的でした。

事務所・オフィスの空きスペースをコワーキングスペース

事務所やオフィスというのは、移転をする場合には、将来の成長を見込んで移転時に必要なスペースよりも広めの場所を借りることが多いです。

私のサラリーマン時代にもそういう場面があり、オフィスの半分以上は空席ということがありました。

その状況において、オフィス賃料の負担軽減のために、一部をコワーキングスペースとするという方法があります。コワーキングスペースの運営において、負担が大きいのは場所代と人件費です。

社員が交代で受付をできる体制を作れるのであれば、空席を売上につなげることができます。

個人的には、オフィスを必要の2倍の広さを借りて、半分をコワーキングスペースにして、コワーキングスペースの売上でオフィス全体の賃料が賄えて、かつ社内と社外の接点ができるという感じを目指すのいいなと思ってたりします。

将来の顧客獲得のためにオフィススペースを提供

コワーキングスペースというのは、起業家が集まるので、将来の顧客につながるという目論みで、不動産会社、OA機器販売会社、オフィス家具メーカーなどがコワーキングスペースを運営しているケースがあります。

また、投資先を発見する場としてコワーキングスペースを運営しているケースもあります。スペースを貸すという瞬間的な売上ではなく長期的な視点での投資という形での考えです。

本屋とコワーキングスペース

本屋とコワーキングスペースというコラボレーションの事例があります。大阪の梅田の関大が運営するコワーキングスペース KANDAI Me RISE倶楽部とTSUTAYAです。

コワーキングスペースは書籍を置いているところが多いですが、どうしても古くなっていきます。そこを本屋とコラボレーションすることで、コワーキングスペースは新刊を置けて、本屋は新刊の宣伝になるという形をとっています。

住宅展示場や家具屋とコワーキングスペース

個人的に、住宅展示場や家具屋とコワーキングスペースの組み合わせはありだなと思っています。

Umidassの近くに注文住宅のショールームをレンタルスペースとして提供している会社があります。(Umidass的にはありがたくないですが^^;)ここはそれほど広くないのですが、こういう形でのコワーキングスペースもありだなと思います。

コワーキングスペース×他事業はうまくいかないケースも多い

コワーキングスペースと他事業の掛け合わせは面白いと思うのですが、うまくいかないケースも多いと感じています。

うまくいかないと一口に行っても、「カフェとしてはうまくいってるけどコワーキングスペース利用はない」といったコワーキングスペースとしてはうまくいっていないケースもあれば、「コワーキングスペースの人員分が赤字」というまったくダメな場合もあります。

うまくいかないケースのポイントとして感じることは

空きスペースを貸すという場所貸しはうまくいかない

場所貸しだけの発想では難しいと感じます。場所貸しだけなら、コワーキングスペースではなくレンタルスペースや貸し会議室の方がうまくいくと思います。

ハード的なスペースの提供とともに、ソフト的なコミュニティや雰囲気などの提供が必要だと思います。

企業規模のある会社がした場合にトッププレイヤーを配置するかどうか

企業がコワーキングスペースを運営する場合に、売上が上がらない事業だからと新人などを配置するケースがあります。

コワーキングスペースは、そこにいる人(オーナー、スタッフ、利用者etc)がどういう人かということが集客に影響しています。

コワーキングスペース運営が、企業にとって重要な位置づけであるのであれば、トッププレイヤーを配置すべきです。

他事業があるからと無料では機能しない

他の事業があるから無料で運営しているというコワーキングスペースもあるのですが、うまくいかないことが多いです。

この理由については整理しきれているわけではないですが。お金を払うことでサービスの提供者も受益者も責任が発生しているのに、無料が故に双方に適当な状況になり、結果としてスペースの質が悪くなることが大きいのではないかと思います。