創業計画書は、「創業計画書は、事業を通じて返済が可能であることを示す計画書」であるということを下記の投稿においてまとめました。
上記記事では創業計画書の全体的な説明をしていますが、当事務所では、創業計画書の9つの項目の中でもっとも大事な項目が「1.創業の動機」だと考えています。
「創業の動機」にて、事業の実現に対する熱意と継続性をしっかりと示す
創業計画書のフォーマットでは、たった4行の「創業の動機」ですが、もっとも重要な項目であると考えています。創業計画書が「事業を通じて返済が可能であることを示す計画書」であると考えた場合、「創業の動機」が「事業を通じて」の部分の説明になるからです。ちなみに「返済で可能であること」は、「 必要な資金と調達方法」「事業の見通し」で説明をすることになります。
なぜ、創業の動機が重要なのか?
なぜ、創業の動機が重要であるかと言えば、創業者には他に評価するポイントがないからです。一般的に事業融資の場合、事業内容を評価して融資の審査がされます。事業の過去の実績、過去の実績をもとにした今後の事業の見通しを元に審査するわけです。
しかし、創業者にはその評価することができません。どれだけ事業計画をまとめてもそのとおりに進むかはわかりません。もっと言えば、まったく同じ事業計画であったとしても事業の結果は異なってきます。お店の場合、接客や掃除などのソフト面によっても大きく事業の結果は異なってくることは容易に想像できると思います。
そのため、創業融資においては、事業内容そのものだけでなく、下記のような事業をする理由や準備状況が重視されます。
- あらたに事業をする理由(創業理由や経歴)
- 創業・開業にあたっての準備事業(資金・スキル、経験)
- 創業・開業後の収支計画
準備状況や収支計画を理解するために必要となるのが、「創業の動機」となるということです。
創業計画書の記入例では厳しい
日本政策金融公庫の創業計画書の記入例は、以下のようなものが多く、前から独立したいと思ってたところ、いい物件が見つかったというような形になっています。
この内容では、あまり熱意は感じられませんし、しっかりと準備をしてきたとも感じられません。「創業の動機」はフォーマットの4行ではなく別紙でしっかりとまとめていただきたいのですが、4行だけで説明するにしても以下程度にはまとめていただきたいと思います。
20代のころから●●料理のお店で独立したいと考えており、その準備として現勤務先にて調理●年、店舗運営●年の経験を積んできました。独立にあたってのスキル、経験はしっかりと身に付いたと考え、3年ほど前にから具体的に独立を計画し、開業資金の貯金と店舗探しをしてきました。目標金額が貯まり、私の求めていた規模の店舗が見つかり、家族の後押しもあり、独立を決意しました。
「創業の動機」で伝えたいこと
「創業の動機」で伝えたいことは、以下のようなことです。すべてを満たすことをできることはまれだと思いますが、下記の点を意識してまとめていただきたいです。
- 事業が形になるまで投げ出さずに取り組む理由や背景がある。事業に一心に取り組むという情熱・熱意を伝える。
- 創業にあたって必要な経験と資金を踏まえて計画的に進めているという計画性を伝える。
- 取引先や顧客がすでに見つかっているなどの事業の見通しの明るさを伝える。
- 家族や周囲の協力を伝える。
- 社会的な意味やニーズを伝える
なぜ、上記のようなことを伝える必要があるかと言えば、お金を貸す側から見ると、「計画通りに事業が進まない」「別の事業へと変えてしまう」「返済ができなくなる」といったことを避けたいからです。
「創業の動機」で伝わってしまうとよくないこと
逆に言えば、下記のようなことが伝わってしまうと審査に対してマイナス評価となります。
- いきあたりばったり感、思いつきで進めている
- その事業に対する経験やスキルがない
- 家族や周囲の協力を得ることができない
何よりももっともマイナスでありながら、もっとも多いのが「今の会社を辞めたいから」ということです。「今の会社を辞めたい」と思っていたところに流行りの●●をするきっかけができたのでその事業をやろうと思います。といったことが、「創業の動機」の内容から伝わることは少なくありません。
そうなるとこの人は、「厳しい状況になったときに投げ出すのではないか?」「他に儲かりそう、流行りの事業が出てきたら商売替えするのではないか?」といった疑念を持たれてしまいます。
また、日本政策金融公庫は、創業時に「家族の理解と協力」が大切であるとしていて、日本政策金融公庫の創業フローチャート においても「家族の理解」が重要なチェック項目となっています。
経営者の経歴で経験とスキルを伝える
「創業の動機」であなたの熱意や計画性を伝えたのちに経営者の経歴で経験やスキルを伝えます。
事業をするのに経験年数などは関係ないという方がおられます。事実、そのような側面もありますが、お金を借りるという局面においては客観的に評価できる具体的な内容が重要となります。
例えば、飲食店の場合、経験年数がある人よりも美味しい料理を作ることができる未経験者はいるかもしれません。しかし、融資の面談の場所に行って料理を食べてもらうこともできなければ、融資担当者も料理の味を持って融資判断ができるようなことはできません。そのため、経験内容や年数が重視されます。他にも受賞経験などもプラス評価となります、融資担当者が料理の評価をすることはできませんが、●●料理コンテストで●賞受賞ということは料理の評価に変えることができます。
経験した内容をできるだけ具体的に伝える資料を作る
創業計画書のフォーマットに記入できることはスペースの問題から記入例のような形となります。
年齢や経験内容によりますが、この数行であなたの経験やスキルを伝えるのは少し難しいのではないかと思います。転職の職務経歴書であってももっと詳しく書きます。転職の職務経歴書をベースにするような形でまとめると良いと思います。
日本政策金融公庫の融資審査では、これから行う事業と同じ業種、事業の経験があるかどうかが非常に重視されます。新創業融資制度では、5年の経験があれば、自己資金が不要となっていましたので、5年以上の経験があるのが一番良いです。
直接的な経験はなくとも活かせる経験はないか?
これから行う事業の経験があれば、良いですが、経験がないこともあります。また、経験が無いからと言って、これから経験をするというのは時間がかかります。もちろん経験がある方が事業成功の可能性は高まりますので、可能であれば、創業・開業をしようと考えている業種で働くことはおススメします。
しかし、年齢的、時間的に難しいケースや、そもそも経験を積むために雇用してもらう必要がありますので、その点から難しいケースもあるかと思います。
その場合でもこれまでの経験を洗い出してマネジメント経験、経理経験、営業経験あるいはアルバイト経験など活かせる経験を書くようにしましょう。内容によってどこまで評価されるかはわかりませんが、マイナスに働くことはありません。また、これまでのご自身の経験の洗い出しによって気づきを得ることもあります。
未経験であることを補完する取り組みを書く
別の観点として未経験であることを補完する取り組みを書くことも一つです。
例えば、建設業の許認可において管理責任者や専任技術者といった経験者の存在が必須ですが、経営者自身である必要はありません。このように不足している部分を共同経営者や雇用で防ぐということや、外部協力者として協力してもらえることが約束されているということは一つの手段です。
また、フランチャイズへの加盟によって、サービス提供に関するスキルは本部の研修によって獲得できるということも一つの方法です。
当事務所では、ご相談者様へのヒアリングなどを通じて、ご相談者様とともに計画書の内容を考えていく支援をしていますので、お気軽に相談ください。
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