私は、大阪府豊中市でコワーキングスペースUmidassを運営していますが、豊中の中でもかなり住宅街の中にあります。コワーキングスペースというと都心部やビジネス街など人が集まる場所にあるというイメージの人が多いと思います。事実、日本で一番コワーキングスペースが多い地域は渋谷です。
コワーキングスペースは郊外で成立するのか?ということを私がUmidassを運営しているわけとともにまとめました。
コワーキングスペースは都心部やビジネス街で無くても成立するのか?
結論から言うと、郊外でも成立すると私は思っています。ですが、ビジネスとして成立するのかというと確かに疑問は残ります。
ビジネスとして、コワーキングスペース単体で成立をさせようと思うと、一定の利用者数が確保できる立地である必要があります。市区町村の人口というよりは、最寄り駅の乗降数などがその目安となるかと思います。
一方で場所を借りてスペース運営をする場合には、家賃が掛かってきますが、こちらは当然のように人の多さと比例して家賃は高くなります。一方で、立地に関係なく掛かる費用として、大きなものは、設備等の初期費用と、人件費があります。細かなものですと通信費などがあります。
そんな中でUmidassを豊中市で運営している理由と現状とともに、郊外でコワーキングスペースを運営している事例、これから郊外でコワーキングスペースを運営しようと思っている方へのアドバイスです。
豊中市という郊外でコワーキングスペースUmidassを運営している理由
そもそも豊中市と言われても、大阪のどこにあるのかご存知で無い人も多いと思います。また、郊外と言っても大阪なので地方都市とは違うのではないかと思う人が多いと思うので、コワーキングスペースUmidassの場所から少し説明しておきたいと思います。
大阪空港の近くで、豊中市の中でも北部。箕面市や池田市に近く、最寄駅が大阪モノレール「柴原駅」という立地
豊中市と言えば、最近の話題で言えば、森友学園があることで報道で名前を聞くことが多くなっていますが、森友学園があるのは服部と言われる地域で豊中市の中でも南部の方にあたります。Umidassはその逆の豊中市の北部にあります。
豊中市の人口は、39.5万人です。大阪万博のころに千里ニュータウンを中心に人が増えたベッドタウンで、大阪府下では5番目に人口が多い市です。ですので、ビジネス街と言われるような地域はなく、ほとんどが住宅街です。
ここまで聞くと、十分に人が多いと思われるかもしれませんが、最寄り駅の「柴原駅」は大阪モノレールの沿線となり、乗降人員数が9,000人ちょっとの小さな駅で、もともと住宅街だったところに作られた駅なので、駅周囲にはコンビニやお店はほとんどありません。ただ、大阪大学と豊中市民病院の最寄り駅なのでそこへ行くための利用者はそれなりにいるという地域です。
Umidassの利用者の方も大阪モノレールをメインの交通手段として利用されている方は少なく、利用者の多くは自転車が自動車になります。
Googleで「柴原駅」と「Umidass」が写っている航空写真を見ていただくとわかると思うのですが、見事に住宅地です。
では、こんな地域でなぜコワーキングスペースを運営しているのかという本題に入ります。
私とコワーキングスペースの出会いは会社を退職後に高槻のI'll beを利用してから
昨日の記事では、Forbes JAPAN編集部の新雑誌「WORK MILL」で「コワーキングスペース」アドバイザーとして紹介されたと書きましたが、私とコワーキングスペースの出会いはそれほど古くないです。
私は、もともと京都のWEBコンサルティング会社で11年働いていました。その会社を2013年に退職をしました。Umidassを運営している株式会社エッグレイを設立したのが、2015年です。
その間の2年間ほど、自宅でネットショップを運営していました。商品を発送するといった実務的なことは自宅でも集中して作業できるのですが、新しいビジネスを検討したり、今後のことを考えるといったことは自宅ではできないと感じていました。自宅では、テレビばかり見たり、すぐに投げ出して遊びに行ったりしています。(私の個人的な意思の弱さも影響していると思います。)
そんなときに、以前から名前だけは知っていたコワーキングスペースが自宅のある高槻市にできたということを偶然知り、時折、コワーキングスペースを利用することになりました。そのコワーキングスペースが高槻のコワーキングスペース I'll beです。
コワーキングスペースを利用して、当時の私のように個人事業主やフリーランスの人にとっては必要なサービスだと強く感じました。
私がコワーキングスペースを必要だと感じた理由
それは、次の2つです。大したことではありませんが、でも、自宅で仕事をしているのとは精神的には大きく違います。
仕事とプライベートのON/OFFを切り替えれる(通勤がある)
自宅で仕事をしていると私のような意思の弱い人間はすぐにテレビを見たりします。(正直、人生であれほど国会中継を見た時期はありません)やはりプライベートと仕事の切り替えというのがなかなか難しいです。特に自宅の自分の部屋で仕事をしていると寝ている布団から出てすぐそこにある机で仕事をするというのはなかなかできません。そこで5分でも10分でも通勤というプロセスを取ることで切り替えができます。
もちろん仕事の性質にもよると思います。請負側の仕事の場合、クライアントがいて期限もあります。一方でネットショップやサービス運営の場合には、お客さまはいても期限を決めるようなクライアントはいません。この違いも仕事への取り組み方は影響してくると思います。
毎日、挨拶をする人がいる、ちょっとした会話をする人がいる
これは、意外と多くの人が気づいていないかもしれませんが、毎日、挨拶をするということは人間にとって必要な気がします。
コワーキングスペースはコミュニティだと言われますが、コミュニティと聞くと抵抗感のある人も多くいると思います。
実は私自身もそうです。
ですが、それほど濃厚な関係を築く必要は無いと思います。イメージとしては会社で言うと他部署の同僚のような感じでしょうか。会えば挨拶をするし、ランチ時や帰宅時にたまたま一緒になれば、ランチをしたり、駅まで会話をしながら歩くそんなレベルの関係です。
コワーキングスペースが必要だと感じた大きな理由は上記の2つですが、コワーキングスペースの必要性を感じたからと言って、自分のお金を使ってコワーキングスペースを運営する理由にはならないです。むしろ、コワーキングスペースの利用者側でいる方が、リスクもなく、さまざまなスペースを好きに利用できます。
では、どうしてUmidassを運営しているかというと
Umidassには私にとって、コワーキングスペース運営以外のメリットがあった
コワーキングスペースを運営することがスペース運営単体のメリット以外のメリットがあったから
自社のオフィススペース、拠点が必要だった
当時、運営していたネットショップの年商が大きくなり、ネットショップを拡大するかどうかという岐路にありました。そこで、ネットショップは他社に事業譲渡をして、新しくWEBサービスを運営する会社を作ることにしました。そのためには、自宅では不都合があり、「オフィス」が必要でした。
この「オフィス」の場所というのが悩ましい状況でした。というのも、私には実家の安楽寺の副住職としての仕事もあります。安楽寺は豊中にあり、私自身の自宅は高槻なので毎日出勤しています。さらに別の場所に「オフィス」ということになると1日の多くの時間が移動時間になってしまいます。
Umidassを運営している建物が使われていなかった
コワーキングスペースUmidassのある建物は過去に塾の経営や法事後の食事で利用されていた建物です。もともとコワーキングスペースUmidassのある建物では、現在の安楽寺の住職が20年ほど前まで塾をしていました。(だからUmidassには教卓や生徒机があります。)また、和室スペースは、安楽寺で法事を終えた後の食事をする場所として利用されていました。
それが、Umidassを運営する前には、塾はやめており、法事後に安楽寺で食事をする人が減り(近くにバスで送迎されるお店などが増え、仕出し弁当よりもお店の方を勧めるようになりました)、この建物はほとんど使われなくなりました。
一部の部屋だけ、公文式やそろばん教室などで利用されている程度でした。ですから、今のUmidassのメインスペースも下記のように物置状態でした。
他人との接点を持つ機会を自然と増やしたかった
前職での経験です。前職は、入社時に社員数が 5名くらいの会社でした。ちなみに私が退職する時には社員数 80人以上になっていました。
入社時には全体でも 5名くらいしか社員がいないのに、オフィスが小さかったため、2部屋に分かれていました。
毎日、同じ人とだけ顔を合わすというのは、閉塞感があります。また、業界、社会の情報に関するインプットも限られたものとなります。その点をコワーキングスペースを運営することで解決できるのではないかと思いました。
利益は出なくても収益が出る仕組みになる
新しいWEBサービスの開発にあたっては、マネタイズには時間がかかるだろうから日銭を稼ぎたいということがありました。どうせ、毎日、スタッフがいて、空いているスペースがあるのであれば、そこを使って日銭を稼ぐ仕組みを作っておきたいと思いました。
郊外でもコワーキングスペースって成立するのではないかというチャレンジ
既に書いたように私は、もともと高槻のコワーキングスペース I'll beを使っていましたが、 I'll beは、JR高槻駅の駅前にあります。
自宅から自転車で行ってたのですが、別に高槻駅に用事もないので、自宅から高槻駅から反対方向に自転車で行ってもいいし、むしろその方がコインパーキングとか安くていいのにと思っていました。それに駅前ではない分、家賃などの固定費は安くなります。当時は、大阪では本町や難波などの中心地にしかコワーキングスペースがなく、 I'll beがJR高槻駅前とはいえ、郊外型のコワーキングスペースでした。そんな状況の中で、チャレンジしてみたいと思いました。
以上が、豊中という郊外でUmidassを運営している理由です。大きな理由ではないのですが、安楽寺というお寺の経営を考えた場合にも、お寺離れが進む中で、地域社会との関係を持てるコワーキングスペースは親和性が高いのではないかとも思っていました。どれか一つでも欠けていたらUmidassをこの場所でしていることはなかったと思います。
郊外型コワーキングスペースは全国にたくさんある
郊外型のコワーキングスペースは全国にあります。
具体的なところでは、滋賀県湖南市の今プラスは、オーナーの中野さんとも個人的に親しくさせていただいていますが、10月には駅前の大きな建物に移転されます
co-co-po.com
他にも全国には地方都市であったり、Umidassのような立地のスペースもあります。ただ、残念なことに個人的にはほとんど行ったことがないので、特定のスペースの紹介はしにくいので、cocopoの各都道府県へのリンクとスペース数(2017/9/26時点)を紹介しておきます。都道府県によってばらつきはあるものの全都道府県にコワーキングスペースはあります。お住いの都道府県や馴染みのある都道府県を見てみてください。
北海道・東北のコワーキングスペース
関東のコワーキングスペース
北陸・甲信越のコワーキングスペース
東海のコワーキングスペース
関西のコワーキングスペース
四国のコワーキングスペース
中国のコワーキングスペース
九州・沖縄のコワーキングスペース
郊外型コワーキングスペースを運営するのであれば、別のメリットを併せ持つ方が良い
郊外でコワーキングスペースを運営することを考えているのであれば、コワーキングスペース単体での収益というのは正直難しいというのが実情です。
ただ、無理とは思いません。集客をして、そのコワーキングスペースを継続してもらえる理由が作れるのであれば、十分に成立すると思います。ですが、特定の業界における有名人であったり、自分自身がセミナーやイベントを開催できるスキルがある等のバックボーンが無いと大変なのではないかと思います。
コワーキングスペース事業単体ではなく、「他事業の収益に繋がる仕組み」や「オフィススペースの固定費をスペースの売上でカバーする」といった他の事業との兼ね合いの中でコワーキングスペース運営をすることにメリットを作ることが大切だと思います。
コワーキングスペースという事業の性質上、お客さまに来てもらわないといけないということがあります。イベント、セミナーでお客さまを呼び込むということもできますが、基本的には受け身のスタイルです。また、飲食店のように目に見えるサービスを提供するわけでもありません。そういった点からもコワーキングスペース単体で考えるのではなく、別の事業と掛け合わせる方が運営者の精神衛生上も良いです。
冒頭の方に書いたように、どこで運営しても受付スタッフの人件費は同じように発生します。(最低自給は地域によって異なりますが。。)特に人を雇用する場合には、この人件費をスペース以外でも活用できつつも、スペース運営には支障がでないという状況を作るといった工夫が必要だと思います。
最近では、コワーキングスペースの利用者をターゲットとしている商材やサービスを提供している会社がコワーキングスペースを運営していることもあります。そちらの事業で収益が出せるからコワーキングスペースの利用料を安くしているスペースもあります。賛否はあるかと思いますが、それでそのスペースのコミュニティが潤滑に回っているのであれば問題ないと思います。Umidassでもホームページ勉強会などを開催していますが、同じようなものかもしれません。
そして、コワーキングスペースの運営にはポイントがあります。毎月、売上がきちんと上積みされるための仕組みを作っておくことです。この点については、運営開始時によく検討をいただきたい点です。