省力化補助金、新事業進出補助金、ものづくり補助金など、設備投資や新事業に活用できる大型補助金では、事業計画の作成が採択に向けた重要なポイントになります。
最近ではChatGPTやClaudeなどの生成AIを使って、事業者自身が事業計画を作成するケースも増えてきました。
私自身、中小企業診断士として補助金申請の支援や経営相談を行う中で、AIの普及によって補助金の事業計画全体のレベルが上がってきたと感じています。
その結果、これまで以上に重要になっているのではないかと感じるのが、
売上・利益・付加価値額、そして給与支給額などの「数値計画」
です。
今回は、省力化補助金、新事業進出補助金、ものづくり補助金などへの申請を検討している中小企業・小規模事業者向けに、AI時代の事業計画作成と数値計画について解説します。
AIで補助金の事業計画を作る事業者が増えている
経営相談の中で、
「自分で補助金の事業計画を作ったので見てほしい」
「一度申請したが採択されなかったので改善したい」
といった相談を受けることがあります。
最近、そのような事業計画を見ると、ChatGPTなど何らかの生成AIを利用しているケースがかなり増えています。
そして、事業計画の内容も二極化している印象があります。
一方には、AIをうまく使いながら自社の事業を掘り下げ、補助金の審査項目にも対応した非常にレベルの高い事業計画があります。
その一方で、文章自体はきれいに書かれているものの、中身を見ると一般論が多く、自社の経営課題や強み、設備投資による具体的な効果が十分に説明されていない事業計画もあります。
AIに事業計画を丸投げすると内容が薄くなりやすい
例えば、
- 補助金の公募要領
- 自社のホームページや会社情報
- 導入したい設備
- 「採択される事業計画を作ってください」という指示
これらをAIに入力すれば、それらしい事業計画を作成することはできます。
しかし、それだけでは、
「なぜこの会社にこの設備が必要なのか」
「現在どのような経営課題を抱えているのか」
「その課題が発生している原因は何なのか」
「設備導入によって具体的に何が改善するのか」
「その改善をどのように売上や利益につなげるのか」
といった、自社固有のストーリーが弱くなりがちです。
社名を他社に置き換えても成立するような内容では、十分な事業計画とはいえません。
省力化補助金などの事業計画は「設備」から考えない
補助金申請を考える際に、
「この設備が欲しい」
↓
「使える補助金を探す」
↓
「設備を買う理由を考える」
という順番になってしまうことがあります。
しかし、本来は逆です。
現状分析 → 経営課題 → 原因 → 解決策 → 設備導入 → 効果 → 数値目標
という流れで考える必要があります。
特に省力化補助金であれば、
「現在、人が行っている作業は何か」
↓
「どこがボトルネックになっているのか」
↓
「設備導入によって何時間削減できるのか」
↓
「生まれた時間や人員を何に活用するのか」
↓
「それによって売上・利益・付加価値をどう増やすのか」
までつなげることが重要です。
単に「最新設備を導入して生産性を向上させます」だけでは、具体的な事業計画にはなりません。
専門家も補助金の事業計画作成にAIを活用している
生成AIが普及すると、
「補助金申請は専門家に依頼しなくてもAIでできるのでは?」
と考える方もいると思います。
実際、補助金制度を理解した上でAIを適切に活用できる事業者であれば、自社でかなりレベルの高い事業計画を作成することも可能になっています。
一方で、補助金申請を支援する専門家側もAIを活用しています。
私自身も、
競合調査や市場調査、事業計画全体の壁打ち、審査項目の漏れの確認、文章の重複や矛盾のチェック、文章校正などにAIを活用しています。
重要なのは、AIに事業計画を考えてもらうのではなく、自分たちで考えた事業計画をAIによってブラッシュアップすることです。
AIによって事業計画作成が簡単になった一方、申請される事業計画全体のレベルも上がっていると考える必要があります。
事業計画の文章で差がつきにくくなっている?
ここからは、補助金申請を支援している中での私自身の実務上の感覚です。
生成AIの活用などによって、審査項目を押さえ、きれいに整理された事業計画が以前より増えています。
補助金には予算があるため、一定水準以上の事業計画を作ればすべて採択されるわけではありません。
レベルの高い事業計画同士で比較されるようになれば、文章をきれいに作ることだけでは差がつきにくくなります。
そこで、相対的に重要性が高まっているのではないかと感じるのが数値計画です。
省力化補助金・新事業進出補助金・ものづくり補助金で考えたい数値計画
大型の補助金では、単に設備を導入するだけではなく、その投資によって会社をどのように成長させるのかを考える必要があります。
例えば、
売上高
「売上を10%増やす」だけではなく、何を、誰に、いくらで、何件販売することで売上を増やすのか。
利益・付加価値
設備投資によってどのように生産性や収益性を高めるのか。
給与支給額・賃上げ
設備投資や新事業によって生まれた成果を、どこまで従業員の給与に還元できるのか。
こうした数値について、単に大きな数字を設定すればよいわけではありません。
実現可能性があり、その根拠を説明できる数値計画を作ることが重要です。
特に重要なのが「給与支給額・賃上げ」の計画
近年の大型補助金を検討する上で、特に注意していただきたいのが給与支給額などの賃上げ要件です。
補助金によって具体的な要件は異なりますが、給与支給額や最低賃金などについて一定の目標を設定し、その達成が求められる制度があります。
ここが売上計画などとは大きく異なるところです。
新製品を発売したものの想定ほど売れなかった、ということは事業では当然起こり得ます。
一方で、給与支給額について達成を約束する制度では、目標を達成できなかった場合に補助金の返還が必要となるケースがあります。
そのため、
「採択されやすくするために、とりあえず高い賃上げ率を書いておく」
という考え方はおすすめできません。
給与支給額は専門家ではなく経営者が決める
補助金の専門家は、事業計画の作成を支援できます。
経営課題を整理したり、事業のストーリーを一緒に考えたり、審査項目への対応を確認したりすることもできます。
しかし、
「今後、従業員の給与をどこまで上げるのか」
を最終的に決めるのは経営者です。
例えば、最低限必要な賃上げ率を設定するのか。
それとも、今回の設備投資や新事業によって会社を成長させ、その成果を従業員にも還元することを前提に、より高い賃上げを目指すのか。
これはAIにも補助金の専門家にも決められません。
経営者自身の判断になります。
そして、事業計画の文章レベルが全体的に高くなっていけば、こうした経営者自身が決断する数値計画が、事業計画の差につながる可能性があると私は考えています。
補助金申請前に「いくら賃上げできるか」を確認する
省力化補助金、新事業進出補助金、ものづくり補助金などへの申請を検討する場合、設備や事業計画だけを先に考えるのではなく、
「自社は今後、どこまで給与を上げることができるのか」
を事前にシミュレーションしておくことをおすすめします。
特に大型の設備投資では、
設備投資によってどれだけ生産性が上がるのか。
売上・利益をどこまで増やせるのか。
その成果をどこまで賃上げに回せるのか。
そして、その計画を本当に実行できるのか。
ここまで考えた上で申請することが重要です。
まとめ|AI時代だからこそ数値計画まで考えた補助金申請を
生成AIによって、補助金の事業計画を作成するハードルは大きく下がりました。
しかし、AIを使えば補助金に採択されやすくなる、という単純な話ではありません。
事業者も専門家もAIを活用することで、事業計画全体のレベルが上がれば、文章だけでは差がつきにくくなります。
だからこそ、
売上、利益、付加価値、そして給与支給額・賃上げ
まで含めた数値計画をしっかり考えることが、これまで以上に重要になってくると考えています。
省力化補助金、新事業進出補助金、ものづくり補助金などへの申請を検討されている方は、「どの補助金が使えるか」だけではなく、その補助金を活用して会社をどこまで成長させるのかという視点から事業計画を検討してみてください。
当事務所では、補助金の活用や事業計画策定に関するご相談にも対応しています。自社にどの補助金が適しているのか、事業計画や数値計画をどのように考えればよいのかなど、お困りの際はお気軽にご相談ください。
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