起業や新規事業の相談を受けていると、経営者が目指しているものは人によって大きく違います。
「会社をどんどん大きくしたい」「将来的には上場したい」という方もいれば、「家族が生活できるだけの収入が得られれば十分」という方もいます。
どちらが正しいというものではありません。経営の目的は経営者によって違って当然です。
ただ、私自身が経営相談の中でよくお伝えしていることがあります。
「経営者は、最後まで事業を続けることができれば成功ではないでしょうか」
私自身も独立して10年以上になります。その間、「ものすごく儲かっているな」と思っていた経営者が数年後には事業から撤退していた、というケースを何度も見てきました。
一方で、派手さはなくても何十年と商売を続けている会社やお店もあります。
もちろん、一気に事業を成長させて会社を売却することなどを目標にする経営もあります。しかし、長く事業を続けたいのであれば、「何をすれば儲かるのか」だけでなく、**「どうすれば潰れにくい事業になるのか」**という視点も重要です。
今回は、私自身の経験も踏まえながら、長く続く事業を作るために意識したい4つのポイントを紹介します。
1.一つのトレンドに依存しすぎない
事業には、その時々で大きな需要が生まれる分野があります。
私が中小企業診断士として経験した代表例が、コロナ禍における補助金支援です。
当時は新しい補助金制度が次々と登場し、補助金申請の支援ニーズも非常に大きくなりました。
私自身、補助金を活用した新規事業の計画を一緒に考える仕事は好きです。新しい商品やサービスについて経営者と話しながら事業計画を作っていくのは、とても面白い仕事だと感じています。
一方で、コロナ禍という特殊な環境によって生まれた需要が、そのままずっと続くとは考えていませんでした。
そこで、補助金支援だけに仕事を集中させるのではなく、金融支援、経営改善、専門家派遣、創業支援、セミナーなど、ほかの仕事にも取り組んできました。
結果として、いわゆる「補助金バブル」が落ち着いた後も、さまざまな分野で仕事を続けることができています。
トレンドに乗ること自体が悪いわけではありません。むしろ、事業を成長させるうえで時流を捉えることは重要です。
問題は、一つのトレンドだけに会社全体が依存してしまうことです。
市場環境が変わったときにも事業を継続できるよう、収益源を分散しておくことが大切です。
2.固定費を重くしすぎない
売上を増やすことと同じくらい重要なのが、固定費をコントロールすることです。
私自身、コワーキングスペースを運営しています。
店舗型の事業ですから、家賃など一定の固定費が発生します。また、受付スタッフを常時配置すれば、人件費も大きな負担になります。
特にコロナ禍では、店舗を開けたくても開けられない時期を経験しました。
そこで、システム化や無人運営を進め、人が常駐していなくても利用できる時間帯を増やすなど、できるだけ固定費を抑えられる仕組みに変えてきました。
売上が好調なときは固定費の大きさはあまり気になりません。
しかし、売上が落ちたときには、固定費の大きさが一気に経営を圧迫します。
「売上が少し下がっても赤字にならない」状態を作ることは、事業を長く続けるうえで非常に重要です。
3.毎月ゼロから売上を作らない
もう一つ重要なのが、安定した収入源を持つことです。
いわゆる「ストック型」と「フロー型」の売上を組み合わせる考え方です。
私が以前勤務していたWEBコンサルティング会社では、WEB制作やコンサルティングなど、その都度受注する仕事だけではなく、サーバー管理などの継続的な売上も持っていました。
私の記憶では、こうした継続収入が売上全体の2~3割程度ありました。
それだけですべての人件費まで賄えるわけではありませんが、家賃など人件費以外の固定費については、ある程度カバーできるような構造になっていたと思います。
毎月売上ゼロから営業を始める会社と、月初の段階ですでに一定の売上が見えている会社では、経営の安定性が大きく違います。
これは昔からある商売でも同じです。
商店街を歩いていると、「なぜこの本屋さんは何十年も続いているのだろう」と思うことがあります。
実際には一般のお客様への販売だけではなく、学校の教科書や図書館などとの継続的な取引を持っているケースがあります。
スポーツ用品店なら学校や部活動、布団店なら旅館など、店頭からは見えない継続取引を持っている場合もあります。
ものすごく大きな利益が出る仕事ではなくても、毎年一定の売上が見込める。
こうした収益源を持っていることが、長く事業を続けられる理由の一つです。
4.「安定した事業」もいつかは変わる
ただし、ここでもう一つ考えておかなければならないことがあります。
何十年も同じ事業から安定した収入が得られるとは限りません。
人口構造も変わります。技術も変わります。競争環境も変わります。
どれだけ安定していた事業でも、いつか転換点が訪れる可能性があります。
私自身にもその経験があります。
以前、アパレル系のネットショップを約10年間運営していました。
長期間にわたって安定した収入を得られた事業でしたが、長期的に考えたときに、この事業をそのまま続けていくことには不安も感じていました。
理由はいくつかありましたが、その一つが輸入商品の取り扱いです。為替環境が変化すれば、収益性にも大きな影響が出ます。
そこでネットショップを売却し、その後コワーキングスペース事業を始めました。
売却したネットショップは、その後も運営されていましたが、現在は閉店しています。
もちろん、閉店の理由が為替だけだったとは考えていません。また、私自身が経営を続けていたらどうなっていたかも分かりません。
そのため、「あのとき売却した判断が正解だった」と結果論で言うつもりもありません。
重要なのは、一つの事業を守り続けることと、会社を守り続けることは同じではないということです。
事業環境が変われば、現在の安定収入を手放してでも、新しい事業へ転換しなければならない場面があります。
変化しないことが安定なのではなく、必要なときに変化できることも、事業を長く続けるための条件だと考えています。
潰れない事業は「設計」する
何が流行するのか、10年後にどの市場が伸びているのかを正確に予測することはできません。
しかし、潰れにくい事業構造を考えることはできます。
ポイントをまとめると、
- 一つのトレンドに依存しすぎない
- 固定費を重くしすぎない
- 継続的に得られる収入源を作る
- 必要なタイミングで事業の変化を受け入れる
という4点です。
これから起業する方は、新しい商品やサービスを考えることに意識が向きがちです。
もちろん、「何を売るのか」は重要です。
しかし、それと同時に、
「売上が少し落ちても耐えられるか」
「毎月一定額が入ってくる仕組みを作れないか」
「今の市場が縮小したとき、次に何ができるか」
といったことも、事業計画を作る段階から考えてみてください。
「何をすれば儲かるのか」だけではなく、「どうすれば10年、20年と事業を続けられるのか」。
長期的な視点で事業を設計することが、結果として強い会社を作ることにつながるのではないでしょうか。
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HATA行政書士・中小企業診断士事務所
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