「起業したいけど、自己資金はいくらあればいいんだろう?」
創業相談をしていると、よく聞かれる質問です。
100万円あればいいのか。300万円くらい必要なのか。それとも1,000万円くらい貯めてからでないと危険なのか。
今回は、日本政策金融公庫の「2025年度新規開業実態調査」のデータをもとに、実際に開業した人がどれくらいのお金を使い、どれくらいの自己資金を準備しているのかを見ながら考えてみます。
開業費用の平均は975万円
2025年度の調査では、開業費用は平均975万円、中央値は600万円となっています。
平均だけを見ると、
「やっぱり起業するには1,000万円くらい必要なのか」
と思うかもしれません。
しかし、内訳を見ると少し印象が変わります。
250万円未満で開業した人が20.1%、250万円以上500万円未満が21.7%。つまり、**500万円未満で開業している人が41.8%**います。
平均額だけで「起業には1,000万円必要」と考えるのは、少し違うということです。
開業にかかるお金は少額化している
さらに長期的に見ると、開業費用は少なくなっています。
1991年度は平均1,440万円、中央値970万円でした。それが2025年度には平均975万円、中央値600万円まで低下しています。
日本政策金融公庫も「開業費用は少額化の傾向」としています。
この背景については、いろいろな要因が考えられると思います。
私自身、1990年代と現在では、起業するために必要な環境が大きく変わったことも一つの背景ではないかと考えています。
当時はインターネットも一般的ではなく、携帯電話も普及していませんでした。
事業用の電話を受けようと思えば固定電話が必要で、電話対応のために人を雇えば、その人が働くためのオフィスや机も必要になります。
今なら、パソコンとスマートフォンがあれば、自宅で一人で始められる事業もたくさんあります。
ネットで仕事を受けたり、SNSで集客したり、ECで商品を販売したりすることもできます。
昔に比べると、「小さく始める」という選択肢が増えたのは間違いないでしょう。
自己資金の平均は279万円
では、実際に起業した人は、開業に必要なお金をすべて自分で用意しているのでしょうか。
同じ調査を見ると、資金調達額は平均1,219万円です。
そのうち金融機関等からの借入が827万円、自己資金が279万円となっています。
つまり、事業に必要なお金をすべて自分で貯めてから起業しているわけではなく、借入も組み合わせて開業しているケースが多いということです。
ただし、ここで注意したいのが、
「じゃあ279万円貯めれば起業できるんだ」
という話ではないことです。
事業に投入する自己資金とは別に、自分や家族が生活していくためのお金も考えておく必要があります。
起業するときは「3つのお金」を考える
私は創業相談では、起業するときのお金を大きく3つに分けて考えた方がいいと思っています。
①初期費用
店舗の取得費、内装、設備、パソコン、備品、資格や許認可など、事業を始めるためのお金です。
②運転資金
家賃、水道光熱費、仕入、人件費、広告費など、事業を続けるためのお金です。
③生活資金
住宅ローンや家賃、食費、光熱費、保険料、教育費など、自分や家族が生活するためのお金です。
意外と忘れやすいのが、3つ目の生活資金です。
開業するためのお金を全部使ってしまい、事業を始めた瞬間に預金残高がほとんどない。
これはかなり厳しい状態です。
売上がなくても半年は続けられるか
例えば生活費が月30万円必要なら、半年分で180万円です。
さらに事業の固定費などで毎月30万円必要なら、こちらも半年で180万円。
もちろん必要な金額は、業種や家族構成によって大きく違います。
実家暮らしで固定費のほとんどかからない事業を自宅で始める人と、家族がいて店舗を借りて商売を始める人では、必要なお金が同じはずがありません。
だからこそ、「平均自己資金はいくらか」だけではなく、
「売上が思ったように上がらなくても、何カ月続けられるか」
という視点で考えることが大切だと思います。
私は最低でも半年、できれば1年程度は想定して資金計画を考えておいた方がいいと思っています。
売上ゼロでも収入ゼロにする必要はない
もう一つ、起業したからといって、その事業だけで生活費を稼がなければならないわけでもありません。
副業から始めてもいいですし、売上が安定するまで別の仕事をしてもいい。
実際、私自身も会社をつくる前から副業という形で事業を始めています。
起業後に事業が厳しい時期には、アルバイトを探したこともありますし、人から不要品を預かってネットで販売するようなこともしていました。
コワーキングスペースを始めたときも、最初の半年ほどはほとんどお客さんが来ませんでした。
それでも続けることができたから、その後事業として成り立つようになりました。
起業では、最初から大きな利益を出すこと以上に、
資金が尽きて退場しないこと
が重要だと思っています。
自己資金は「平均額」ではなく自分の条件から考える
2025年度のデータを見ると、開業費用は平均975万円、中央値600万円。そして500万円未満で開業している人も4割以上います。
一方、自己資金の平均は279万円です。
ただし、これらはあくまで平均的なデータです。
「自己資金279万円あれば大丈夫」という意味ではありません。
自分の事業に必要な初期費用はいくらか。
毎月の運転資金はいくらか。
自分や家族の生活費はいくらか。
この3つを分けて計算したうえで、売上が計画通りに上がらなかった場合でも、半年程度は続けられる資金を準備しておく。
起業時の自己資金を考えるときには、平均額そのものよりも、こちらの考え方の方が大切だと思います。
動画では、日本政策金融公庫のデータを見ながら、具体例も交えて詳しくお話ししています。
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