会社を辞めて脱サラをして、法人設立したいという相談をよくいただきます。
脱サラして法人設立するときに考えなければいけないこと
サラリーマンをしていて、独立・開業となると法人設立しなければいけないという考えの方がたくさんいますが、きちんとメリット・デメリットを考える、退職や法人設立に伴う考えないといけないことが多々あります。
法人設立のメリット・デメリット
法人設立が必須なケース
法人設立のメリット・デメリット以前の問題として事業によっては法人設立が必須なケースがあります。よくあるのは、「取引先の取引条件が法人限定」や「法人しか許認可が取れない」というケースです。
「取引先の取引条件が法人限定」については、取引先の勝手ルールなので交渉によっては、個人事業で取引できるケースや、メーカー直接は法人としか取引できないけども、卸業者経由であれば取引できるといった形で回避することができる可能性があります。
「法人しか許認可が取れない」は、例えば、介護福祉施設を運営したい場合などがあてはまります。こういった場合には、法人設立しなければいけません。
創業時の法人化のメリット
創業時の法人化のメリットは大きく以下の3点です。
- 社会的な信用やイメージ:対外的に株式会社、代表取締役と表示、表明できることが有利になる
- 出資してもらう場合、株式会社であれば株式という形で処理しやすい。個人事業だと借入になってしまう。
- 社会保険、厚生年金に入ることができる。
なお、税法上有利、経費の範囲が広いなどのメリットはありますが、創業時点からそのメリットを享受できるほど利益が出るケースは少ないです。
創業時の法人化のデメリット
逆にデメリットは以下のとおりです。
- 単純にお金がかかる。初年度で個人事業よりも50万円多くかかる
- 設立費用が20~30万円。ほとんどが登録免許税などなので安くすることはできない
- 赤字になった場合、利益が少なかった場合でも均等割という形で毎年税金が7~10万円発生する
- 法人の場合には、小規模でも税理士に依頼しなければ難しい。(10~25万円くらい)
- 役員報酬を決めなければいけない。
役員報酬の件は、次の項でもう少し詳しく説明します。
法人設立のネックとなる役員報酬を決定しなければいけない+社会保険料
役員の給料は、役員報酬という形になり、役員報酬を設定するうえでのややこしい点があります。
- 法人設立後3カ月以内に決めなければいけない
- 1年間は変更することができない
- 役員報酬によって社会保険料が決まる
この3点はどのように影響するかというと。想定よりも儲かったとしても、設定した役員報酬以上はもらうことができません。逆に想定よりも儲からなかった場合でも、役員報酬に応じた社会保険料の支払いが発生します。
スポットの仕事が多い会社の場合には、何年たってもいくらに設定するのが最適かは悩んでいる人が多いです。
社会保険や失業手当・再就職手当のこと
サラリーマンの場合には、社会保険に加入していますが、退職すれば国民健康保険、国民年金に切り替えなければいけません。
以下のような考えないといけない事項があります。
- 法人の代表は社会保険加入が必須 ※役員報酬0の場合は除く
- 会社を退職後2年間は任意継続という制度で安く保険に加入できる場合がある制度がある
- 退職をした場合、収入(仕事)がなければ失業手当がもらえる ※条件あり
- 失業手当を受給中の人が再就職すると再就職手当がもらえる。法人設立という形で仕事に就く場合も再就職手当がもらえる。ただし、法人設立を目的とした退職の場合にはもらえない。
法人設立後にすぐに売上があがることが確定しているのであれば、別段検討の必要はありませんが、ビジネスアイデアはあるけども、これから営業をするので売上になるかわからないという人の場合には、慎重に考えた方が良いです。
- 個人事業主として任意継続するか、法人代表として社会保険に加入するかによって金額の違いを確認する
- 事業を開始して、うまくいかなければ再就職も考えるという体制で失業手当や再就職手当をもらえるという保険を作っておくこともリスクヘッジの一つの方法
創業融資のこと
大きな影響はないかもしれませんが、創業融資にも影響が発生します。
- 特定創業支援による創業融資の特例は法人では受けることができない。
- 法人化したことによって融資に有利になるということはほとんどない。
- 法人で無担保・無保証で借りることができればリスクヘッジできる。ただし、無担保・無保証で借りることができるかは審査によるので、法人化しても利用できるかわからない。また、金利などは高く設定される。
脱サラして法人設立をするタイミングは?
大きく3つの方向性があります。個々人の起業時の状況によって、判断は変わってきますので、ご注意ください。
すぐに法人化した方が良いケース
取引や許認可の都合上で法人化しなければならない場合はもちろんですが、確実に安定して一定以上の売上がある場合にも法人化した方がよいと思います。
個人的には個人事業を経て、法人化がベターだと
事業の見通しがついてない人は、まずは個人事業をして、状況を見て法人化を判断されるのが良いと思います。
- 1年程度事業をすれば、今後の見通しもつく、また周囲に相談できる人も増えるので、ゆっくりとタイミングを判断する。
- 失業手当や再就職手当をもらうことができる可能性がある
- 事業がうまくいかない場合、廃業届を出すだけでやめることができる。法人の場合には、決算や登記の手続きで20~30万円かかる
ハイブリッドな形として1期目を短くする方法も
個人事業の場合には、12月に閉めて確定申告をするというルールですが、法人の場合には決算月を自由に設定できます。このルールを使って、1期目は半年程度になるようにして、その期間は役員報酬を0として見極めるという方法もあります。役員報酬0であれば、任意継続を使うこともできます。
以上のように法人設立にはいろいろな要素がありますので、専門家や支援機関に相談をして慎重に判断をしてください。
動画でも詳しく解説しています。