昨年の年末に当社で運営している【コワーキング ジャパン】のサイト名の商標登録の手続きをしました。まだ出願中の状態ですが、今後の備忘録も兼ねて手続き方法や解消した疑問点をまとめました。
自社、自分で作ったサイトのサイト名を商標登録する方法
商標登録という言葉から受けるイメージは、「手続きが面倒そう」「専門家に頼む必要がありそう」「費用がかかりそう」ということではないでしょうか。
私もそうでした。結果から言うと
- 手続きが面倒そう ⇒ 半日くらいでできました
- 専門家が必要そう ⇒ 相談には行きましたが自分でできました
- 費用がかかりそう ⇒ 5万円くらい
という結果でした。今回、初めての手続きでしたので、もしかしたら私の認識違いなどがあるかもしれませんが・・・ひとまず、現状としては上記の認識でクリアできそうでした。
そもそも商標とは?
そもそも商標とは特許庁のホームページでの説明を見ると「商標とは、事業者が、自己(自社)の取り扱う商品・サービスを他人(他社)のものと区別するために使用するマーク(識別標識)です。」とあります。
つまり、自社の「商品名」や「サービス名」を商標登録することで他社のサービスとは違いますというブランドを作るということです。
誰もが馴染みのある単語でいうと「宅急便」と「宅配便」があります。
「宅急便」はヤマト運輸が提供する宅配便サービスの商標です。ですので、他社は「宅急便」という単語を使うことができません。一方で「宅配便」というのは一般的なサービス名称ですので、誰もが使うことができます。
例えば、Google等で「宅急便」で検索するとヤマト運輸関連のページが多く出てきます。一方で「宅配便」という単語で検索するとさまざまな事業者のページが出てきます。
他にも「ホチキス」(商標)と「ステープラ」(一般名称)や「ウォークマン」(商標)と「ヘッドフォンステレオ」(一般名称)などがあります。
商標を取得するメリットとは
では、商標を取得するメリットはというと。
簡単に言うと商標権を持つ商標権者以外は、その名称を使うことができないということです。
先に挙げた「宅急便」「ホチキス」「ウォークマン」レベルに商品やブランドの認知が高まった場合には、ブランドイメージを守ることができるという大きなメリットがあります。
また、商標を取得していること自体がサービスに対して安心感を提供してくれます。
とは言うものの、多くの場合には、商標を取得するメリットは攻めの側面よりも守りの側面が強いです。
どういうことかいうと、商標を取得しておけば、他社に名称を真似されることはなく、仮に真似された場合には差し止めの請求ができます。逆に言えば、他社に商標を取得されてm他社から差し止め請求を受けるということがなくなります。
昨年にヒットしたピコ太郎さんの「PPAP」が無関係な企業が商標出願していたためトラブルになったというのがニュースになったことがあるので記憶にある人もいるかもしれません。こういったことが防げるということです。
サイト名、WEBサービスこそ商標登録をしておいた方が良いのではないかと思う
万が一の場合などを考えると基本的にあらゆるサービス、事業、お店等で商標登録をした方が良いのだと思います。
数万円の費用と手続きの手間とメリットを考えての判断になります。そして、事業やサービス自体の発展性というか将来性にもよると思います。
例えば、多店舗展開することを想定していてかつ、店舗名に特長がある場合などは商標登録が必須でしょうし、逆に1店舗だけの運営でかつ店舗名が(少し失礼な言い方ですが)よくあるような商標登録することも難しそうだったり、訴えられたり、真似されるリスクが無い場合にはわざわざ商標登録をする必要はない(できない)と思います。
サイト名やWEBサービスについては、一定規模以上になることを想定している場合であったり、名称が将来的に真似される可能性がありそうな場合にはさっさと商標登録をした方が良いのかと思います。
サイトやWEBサービスというのは、店舗などに比べると真似するというかパクることが簡単なので、こういった法的な防御手段は必要ではないかと思います。
当社で運営しているコワーキングスペースのポータルサイトはもともと「cocopo」(ココポ)というネーミングでした。これは、コワーカーのためのコワーキングスペースポータルサイトという単語の頭文字を取ったものでした。「cocopo」という名称で運営しているときから商標登録をした方が良いというアドバイスをもらったこともあったのですが、サイト規模や名称の真似される可能性を考えて具体的には動いていませんでした。
今回、サイト名を「コワーキング ジャパン」に変更をしました。サイト規模が大きくなったこと、「cocopo」では、直感的にはどんなサービスかわからないことからストレートかつ信頼性のありそうなネーミングということで「コワーキング ジャパン」にしました。
このようなネーミングとなるとパクられたり、マネされるリスクもあるのではないかと思い、今回は、商標登録の手続きをしてみることにしました。
商号と商標は違う
余談ですが、店舗名のことを書いたので、「商号」と「商標」について簡単に補足しておきます。
商号は事業をするうえでの「会社名」や「屋号」だったりします。同一住所で同一名称を使用することはできませんが、住所が違えば同一名称を使用できます。また、他人がその名称を使うことを禁止することはできません。
一方で商標は商標法において規定され、特許庁に登録するものです。そして、その登録された商標は、日本国内において独占権を得ることができますので、他人に対してその使用を禁止することができます。
具体的な商標登録の手続き方法
前段が長くなりました。。それでは具体的な商標登録の手続き方法です。
具体的な手順の説明の前に商標登録について相談できる方法を紹介しておきます。
特許庁、知的総合支援窓口、商工会議所で相談できる
商標登録にあたって相談できる窓口として特許庁、知的総合支援窓口、商工会議所などがあります。
特許庁の方は丁寧に説明をいただけ、対応も迅速
こういった場合に役所の人の対応というのはあまり良い記憶がないのですが、特許庁には2度相談をしましたが、非常に丁寧に説明をいただきました。
▼特許等のお問い合わせ先一覧はこちらです。
初回に、素直に商標の登録をしたいのですが、どこに相談したらよいのかということを尋ねたところ、「知的総合支援窓口」を紹介してもらいました。
また、提出前に書類の書き方等について最終確認をさせていただいた際も丁寧に教えていただきました。
知的総合支援窓口や商工会議所で無料相談ができる
特許庁から紹介いただいたのが下記の知的総合支援窓口です。
http://chizai-portal.inpit.go.jp/about/
私はこちらは利用しませんでした。というのは、豊中の商工会議所で毎月無料相談ができるようになっており、そちらに相談に行くことにしたからです。
結論から言うと、豊中の商工会議所の無料相談の相談員の方は、知的総合支援窓口の方でした。大阪の「国立大学法人大阪大学中之島センター(一般社団法人大阪発明協会)」から派遣?されている方でしたので、どちらに行っても同じだったということです。
ちなみに私は、豊中の商工会議所の方が近いので豊中の商工会議所に行ったのですが、相談できる日時が限られています。他の地域の商工会議所でも同じようなサービスが提供されているのかわかりませんが、商工会議所が近いのであれば一度相談してみると良いと思います。
一方で、近くに「知的総合支援窓口」があるようでしたら、そちらに直接行くのが良いと思います。
この投稿で一通りの手順はまとめるつもりですが、できれば、直接相談いただくのが一番かなと思います。
書籍などを参考にするのも良いと思います。
商標登録出願の手続きの方法
具体的な商標登録出願の手続きの方法です。
下記の6つのステップで手続きができます。
- 出願できる商標かどうかの確認
- すでに登録されていないかどうかの確認と登録する区分、役務の確認
- 出願書類の作成
- 書類の郵送
- 商標登録出願番号の通知を受け取る
- 登録料の納付
出願できる商標かどうかの確認
出願できる商標かどうかの確認というのはどういうことかというと、簡単に言うと商標として登録することに値するかどうかということになります。
詳しくは特許庁の「出願しても登録にならない商標」を参照いただければと思います。平たくいうとオリジナリティがあって、他の物と混同しない必要があるというところではないでしょうか。
▼特許庁の「出願しても登録にならない商標」
出願にあたってはもう1点あり、実際に使用されているかどうかということです。WEBサイトの場合、多くはそのサイトのロゴを使って商標登録出願をすることになると思いますが、そのロゴが実際に使われている必要があります。
今回、商標出願をした「コワーキング ジャパン」のイメージと実際に商標出願をしたロゴは下記のようになります。
もともとロゴには、もう少し宣伝的な文言等も入っていたのですが、商標として必要の無い文言でしたので、シンプルに変更をしました。
すでに登録されていないかどうかの確認と登録する区分、役務の確認
商標登録をするためには、当然のことながらすでに登録されていないかという確認が必要です。また、登録する区分、役務(簡単に言うと事業、サービスの内容)を調べないといけません。
こちらは「特許情報プラットフォーム」で調べることができます。余談ですが、今は、ネットがあるのでこうやって手元で調べたりできますが、ネットが普及する前って大変だったんでしょうね。。
▼特許情報プラットフォーム
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/all/top/BTmTopPage
試しに「商標」で「コワーキング」で調べると
こんな感じになります。
まず、ここで同一のものがないかを確認したあとに次は区分と役務を探します。
ちなみに上記の検索結果でも区分が出ていますので、参考にすることもできます。
区分や役務の検索は、同じ「特許情報プラットフォーム」の「商品・役務名検索」を使います。
▼商品・役務検索
https://www2.j-platpat.inpit.go.jp/SH1/sh1j_search.cgi?TYPE=000&sTime=1515132132730
下記のような検索画面になるのですが、ここでは、「商品・役務名」に近い事業の一般名称を入れます。今回、私の場合には、「コワーキング ジャパン」というWEBサイトを登録したいと思っていますので、「サイト」と入力をして検索をしたりします。
検索結果が長いのでここでは画像を貼りませんが、「サイト」で検索すると下記のような役務が出てきます。ちなみに区分はすべて「35」です。こういった役務から自分の登録する事業、サービスに近いものをいくつか選びます。
- 通信ネットワークを介して文字・画像又は映像に関する情報をウェブサイトに投稿するための携帯電話機用プログラム
- インターネットにおけるウェブサイトによる広告
- インターネットにおけるウェブサイト上の広告スペースに関する競売の運営及びこれに関する情報の提供
- インターネットのウェブサイトにおける商品の販売に関する情報の提供及び商品の売買契約の媒介又は取次ぎ
- インターネットのホームページサイトでの経営の診断又は経営に関する助言
出願書類の作成
出願書類の作成は難しくありません。
まず、フォーマットをダウンロードします。
▼商標登録出願用紙のダウンロード
https://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/shiryou/kijun/kijun2/syutugan_tetuzuki.htm
上から順に記入していけばよいのですが、私がわかりにくかった点としては、下記の点です。
- 整理番号:ここは出願後に状況を確認するための番号で自分で勝手に設定できるおんで自由な文字で構わないが、全角で記入する必要がある
- 商標登録を受けようとする商標:ここはロゴを登録する場合には、ロゴをそのまま貼るだけで良い。一般的に読める内容であれば、読み方は不要。読み方はそのロゴから想定される読み方すべてが登録されるそうです。
- 指定商品又は指定役務並びに商品及び役務の区分:ここは先ほど調べたものをそのまま登録すればよい。
上記以外は、一般的な内容かと思いますので、普通に記入すればよいです。
記入方法や商標登録に関するQAが下記のURLにありますので必要なら参照ください。
書類の郵送
最後に書類に印紙を貼って郵送します。
印紙は12,000円分です。初めてお金のことがでてきましたが、産業財産権関係の料金は下記のようになっています。
今回の12,000円は「出願料」です。そして何より間違えてはいけないのが、印紙が「特許印紙」とい特殊な印紙になります。近所の郵便局には置いてません。大き目の郵便局に行かないと置いていません。ちなみに「豊中郵便局」や「吹田郵便局」のようなエリア拠点的な郵便局?にはあるようです。
下記のように特許庁長官宛てに「商標登録願在中」という形で書留で送りました。
この後には、「商標登録出願番号の通知を受け取る」「登録料の納付」というステップがあるのですが、半年ほどかかるということと不備があれば、特許庁から連絡をもらって逐次対応をすればよいと聞いています。
進展があれば続報を書きます。また、あくまで私が一度商標出願をした体験の記録ですので、間違っている点などがある可能性があります。ご指摘いただければと思います。
追記:無事に「コワーキングジャパン」のサイト名を商標登録できました
「商標登録願」を郵送後、約10ヶ月で商標登録が完了しました。既に書いたように「商標登録願」の郵送後に「商標登録出願番号の通知」「登録料の納付」について特許庁から通知がありました。その通知書に従って、登録料を納付するのみで特に難しい対応はありませんでした。
こちらが商標登録証です。特許庁長官の名前が一番大きく、登録した商標が小さいというのは少々気になりますが(笑)無事、商標登録ができました。
なお、更新は10年となり、特に通知などはこないため、忘れないようにしないといけません。
Rマークについて特許庁に確認した結果、日本の法律に基づいているわけではないらしい
商標登録が完了したので、Rマークを表示させようと思い、Rマークについて特許庁に確認したところ、日本の法律に基づいたものではないので、特に規制的なものはないらしいです。
もともとアメリカの商標法にならって商慣習的に使っているようです。とはいえ、商標登録されていないものにRマークをつけると虚偽表示となる可能性がありますので注意ください。
ということで、コワーキングジャパンのロゴにもRマークをつけておきました。